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  • アメリカンコッカースパニエルの涙やけ|ドライアイ52倍・チェリーアイ12倍、手引きに15の目の病気が載る犬種

    散歩道をこちらに向かって歩くアメリカンコッカースパニエル
    この記事について

    現時点では個人的に感じた感想や意見はまだ記載しておりません!

    海外の獣医学的に涙やけをどう捉えるのかをまとめて参照した内容となります!

    これはこういうのはあった。これはどうだろう?という僕の経験則の部分はまた随時更新いたします!

    こんな人にオススメな内容
    • アメリカンコッカースパニエルの目の下が、赤茶色〜黄色っぽく汚れている
    • 目やにが粘るようになった、朝に目が開きにくそうにしている
    • 目頭に赤い塊が出たことがある、片目の涙が急に増えた
    • 「コッカーは涙やけしやすい」と聞いたけれど、理由を知りたい
    1. 英国の記録で、ドライアイがいちばん多い犬種です
    2. 手引きに載っている、15の「知られている」目の病気
    3. 目頭の赤い塊:チェリーアイ
    4. まぶた:巻き込みと、たるみと、生える場所の違うまつ毛
    5. 涙点の閉鎖:子犬のころから、片目だけ
    6. 急に片目が赤いときは、緑内障を候補に
    7. 長い耳と、垂れた唇:涙やけの隣で起きること
    8. 受診の目安チェックリスト
    9. 自宅でできること
    10. CLEAR WATER を使う場合の手順
    11. やってはいけないこと
    12. よくある質問
    13. まとめ
    14. 参考文献
    15. 免責事項

    アメリカンコッカースパニエルの目の下が、赤茶色〜黄色っぽく汚れている。目やにが粘るようになった。目頭に赤い塊が出たことがある。「コッカーは涙やけしやすい」と聞いたけれど、理由を知りたい——そう検索してこのページにたどり着いた方に向けて書いています。

    アメリカンコッカースパニエルの涙やけについて、最初にお伝えしたいことがあります。

    この犬種は、「涙が多い」より先に、「涙が足りない」を確かめたい犬種です。 英国の記録で、ドライアイがもっとも多い犬種がアメリカンコッカースパニエルでした。そして、それ以外にも、手引きに載っている目の病気が15あります。目の下の汚れは、そのどれかのサインとして出ていることがあります。

    海外の獣医学的な情報源を確認したうえで、順に整理します。本文で触れている資料の出典は、すべて記事末尾の参考文献に挙げています。

    先に結論だけお伝えします。

    • 英国の一次診療の記録(犬36万3,898頭)では、ドライアイ(乾性角結膜炎)がもっとも多い犬種がアメリカンコッカースパニエル。17頭に1頭(5.90%)、ミックス犬の52.33倍 でした。涙が減ると粘る目やにが増え、涙やけと見た目が紛らわしいのに、中身は逆 です
    • チェリーアイ は、英国の記録(犬90万5,543頭)で ミックス犬の11.57倍。最初の診断の年齢の中央値は 0.63歳。この腺は涙の40〜60%を作るので、切除せず、戻す手術 です
    • ヨーロッパの獣医眼科専門医の団体(ECVO)の手引きには、睫毛重生・眼瞼内反・眼瞼外反・チェリーアイ・ドライアイ・緑内障・白内障 など 15の目の病気 が「知られている」として載っています。涙点の閉鎖 も「報告あり」です
    • 急に片目が赤い・濁る・痛がる は緑内障の候補。当日中 です
    • 米国の標準は、目を「丸く、大きく、まっすぐ前を見る」、頭の毛を「短く細い」、耳を「よく飾り毛のある」としています。目の周りは乾かしやすく、耳と唇は濡れやすい 犬種です

    英国の記録で、ドライアイがいちばん多い犬種です

    カーペットに伏せて、こちらを見るアメリカンコッカースパニエル

    涙やけの記事で、最初にドライアイの話をします。この犬種では、順番がそうなるからです。

    英国の王立獣医大学(RVC)が一次診療の記録36万3,898頭を1年間追跡した研究(2021年)では、ドライアイ(乾性角結膜炎)の発生は犬全体で250頭に1頭(0.4%)でした。犬種別に見ると、アメリカンコッカースパニエルが1位で、17頭に1頭(5.90%)、ミックス犬の52.33倍 でした。2位のイングリッシュ・ブルドッグ(37.95倍)、パグ(22.09倍)、ラサ・アプソ(21.58倍)、キャバリア(19.79倍)を大きく引き離しています。スパニエル系の犬種全体でも、それ以外の犬種の3.03倍でした。

    年齢も関係します。 同じ研究で、12歳以上の犬は3歳未満の29.44倍でした。若いころは涙が多くて涙やけだった子が、年をとって目やにが粘るようになったら、「涙やけが悪化した」ではなく「涙が減った」を疑ってください。

    米国の大学の犬の専門機関(コーネル大学)の解説では、ドライアイは涙の水の部分が十分に作られない病気で、中年の犬にもっとも多く、免疫の異常で涙腺が炎症を起こすのが主な原因です。徴候は、粘り気のある黄色〜緑色の目やに、目の表面のつやがなくなる、目を細める、顔をこする、慢性になると角膜に血管や黒い色素が入る、です。かかりやすい犬種の筆頭に、アメリカンコッカースパニエルが挙げられています。診断は涙の量を測るシルマー試験で、治療はシクロスポリンやタクロリムスの点眼を 一生続ける ことになります。

    「涙やけの記事でドライアイ?」と思われるかもしれません。ただ、ここが見落とされやすいところです。涙の水の部分が減ると、目の表面を守るために 粘り気のある目やに が増えます。それが目の周りの毛について乾き、赤茶色〜黄色っぽく汚れます。涙やけと見た目が紛らわしいのに、中身は逆 です。拭いても拭いても粘る目やにが出る、朝に目が開きにくそう、目の表面のつやがない——そのときは、涙を「拭く」前に、涙を「測って」もらってください。

    「涙が足りない側」の話は、キャバリアの記事にも詳しく書いています。

    あわせて読みたい キャバリアの涙やけ|涙が多いのではなく、足りなくなる犬種です →

    手引きに載っている、15の「知られている」目の病気

    ソファに顎をのせるアメリカンコッカースパニエルの大きな目

    ヨーロッパの獣医眼科専門医の団体(ECVO)が犬種ごとに遺伝性・好発の目の病気をまとめた手引きの2021年版で、アメリカンコッカースパニエルの項は、載っている病気の数が多い犬種のひとつです。「知られている、または遺伝性と推定される」病気として15、「報告あり」として5つが載っています。

    分類病気涙やけとの関わり
    知られている睫毛重生生える場所の違うまつ毛が角膜に当たり、涙が増える
    知られている眼瞼内反(まぶたの巻き込み)毛が角膜に当たり、涙が増える。涙点がふさがれることも
    知られている眼瞼外反(まぶたのたるみ)涙をためられず、こぼれる。結膜が露出して炎症
    知られている第三眼瞼腺の脱出(チェリーアイ)涙の40〜60%を作る腺。切除するとドライアイ
    知られている乾性角結膜炎(ドライアイ)涙が減り、粘る目やにが増える
    知られている緑内障急に片目が赤い・濁る・痛がる。救急疾患
    知られている白内障水晶体の濁り。進むとぶどう膜炎や緑内障の原因に
    知られている角膜ジストロフィー(実質・後部多形性)、持続性瞳孔膜、虹彩嚢胞、視神経乳頭コロボーマ、網膜異形成、進行性網膜萎縮(遺伝子検査あり)、神経セロイドリポフスチン症涙やけとは直接関係しないが、眼科検診で見つかる
    報告あり眼瞼裂の広さ(マクロブレファロン)まぶたの開きが大きく、目の表面が乾きやすい
    報告あり涙点の閉鎖涙の出口が閉じていて、涙がこぼれ続ける
    報告あり露出性角膜症/色素性角膜炎、慢性表層性角膜炎(パンヌス)、網膜異形成(ひだ・地図状)角膜の表面が乾く・炎症を起こす

    涙やけに直接関わるものだけでも、「涙が増える」理由(睫毛重生・眼瞼内反)、「涙が出ていけない」理由(眼瞼外反・涙点の閉鎖)、「涙が減る」理由(ドライアイ・チェリーアイの切除) の3方向がそろっています。だから、この犬種の涙やけは、「拭き方」の前に「どれか」を診察で分けてもらうところから始まります。

    犬の涙やけの原因の全体像と、動物病院での検査は、犬全体の記事にまとめています。

    あわせて読みたい 犬の涙やけの原因は?海外の獣医学的な根拠と受診の目安を解説 →

    目頭の赤い塊:チェリーアイ

    ECVOの手引きで「知られている」病気として載っている 第三眼瞼腺の脱出(チェリーアイ) は、この犬種の飼い主さんが若いうちに出会うことの多い目の病気です。

    英国の一次診療の記録で犬90万5,543頭を調べた研究(2022年)では、チェリーアイの年間の発生は犬全体で0.20%でしたが、アメリカンコッカースパニエルはミックス犬の11.57倍 でした。ナポリタン・マスティフ(34.26倍)、イングリッシュ・ブルドッグ(24.08倍)、カネ・コルソ(14.66倍)、ラサ・アプソ(12.37倍)に次ぐ数字です。最初に診断された年齢の中央値は 0.63歳。興味深いことに、同じ研究で イングリッシュ・コッカー・スパニエルは0.46倍 と、むしろ低い側でした。名前は似ていても、別の犬種です。

    米国獣医眼科専門医協会(ACVO)の解説では、この腺は 涙の40〜60% を作っています。だから、切除すると永久的なドライアイになることがあり、脱出した腺は決して切除せず、元の位置に戻す手術が必要 とされています。

    ドライアイが52倍の犬種で、涙の半分近くを作る腺を失うとどうなるか。この犬種でチェリーアイを「見た目の問題」として放置したり、切除で済ませたりすることの意味は、前の章のとおりです。目頭の赤い塊を見つけたら、押し戻さず、放置せず、受診してください。

    同じ「知られている」病気として、ブルドッグの記事にもチェリーアイの話を書いています。

    あわせて読みたい ブルドッグの涙やけと目の病気|チェリーアイ27倍・ドライアイ12倍、英国の記録が示すこと →

    まぶた:巻き込みと、たるみと、生える場所の違うまつ毛

    青いブランケットの上でまどろむアメリカンコッカースパニエル

    ECVOの手引きで、眼瞼内反(まぶたの巻き込み)、眼瞼外反(まぶたのたるみ)、睫毛重生の3つが、そろって「知られている」病気として載っています。まぶたの縁が内側に巻けば毛が角膜に当たって涙が増え、外側にたるめば涙をためられずにこぼれ、まぶたの縁の分泌腺の出口からまつ毛が生えれば刺激で涙が増えます。「報告あり」の眼瞼裂の広さ(マクロブレファロン)は、まぶたの開きが大きく、目の表面が乾きやすい状態です。

    米国の標準(AKC)は、この犬種の目を 「眼球は丸く、大きく、まっすぐ前を見る。まぶたの縁の形がわずかにアーモンド形の印象を与える。弱々しい目や、飛び出した目ではない」 とし、表情を 「知的で、鋭敏で、やわらかく、人を惹きつける」 としています。眉は「はっきりしていて、ストップは顕著」です。

    「丸く、大きく、まっすぐ前を見る目」を「わずかにアーモンド形のまぶた」で囲む、という標準は、眼球の大きさとまぶたの形のわずかなずれで、巻き込みやたるみが起きやすい組み合わせでもあります。どちらも、外から見て分かるとはかぎりません。片目だけ涙が多い、目頭の毛がいつも濡れている、目を細めることがある——そのときは、まぶたの縁と裏側を診てもらってください。

    まつ毛の話は、トイプードルの記事に詳しく書いています。

    あわせて読みたい トイプードルの涙やけ|涙が多いのか、出口が閉じているのか →

    涙点の閉鎖:子犬のころから、片目だけ

    涙は、目頭の上下のまぶたにある小さな穴(涙点)から鼻へ抜けていきます。この穴が生まれつき開いていない状態が、涙点の閉鎖です。行き場のない涙は、そのまま顔へこぼれ続けます。

    ECVOの手引きには、アメリカンコッカースパニエルの涙点の閉鎖が「報告あり」として載っています。英国の臨床テキストは、涙点が開いていない・小さすぎる犬種について、「ゴールデン・レトリーバーとコッカー・スパニエル(イングリッシュとアメリカンの両方)は確実に過剰に代表されており、おそらくキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ミニチュアおよびトイ・プードル、サモエド、ベドリントン・テリアも同様である」 と書いています。コッカー・スパニエルは、その筆頭に名指しされています。

    見え方には特徴があります。子犬のころからずっと、片目に偏って、拭き方を変えても変わらない。目は赤くなく、痛がらず、目やにも粘らない。ただ、涙だけがこぼれる。色素を目に入れて鼻に抜けるかを見る検査で確認でき、閉じている場合は開ける処置ができます。

    片目だけの涙やけの見分け方は、別の記事にまとめています。

    あわせて読みたい 片目だけの涙やけ|左右差が教えてくれる、目・涙の通り道・歯・鼻の4つの原因 →

    急に片目が赤いときは、緑内障を候補に

    窓辺に顎をのせて外を見るクリーム色のアメリカンコッカースパニエル

    ECVOの手引きには、アメリカンコッカースパニエルの「知られている」病気として 緑内障 が載っています。米国の獣医学の手引き(Merck)も、原発性の緑内障になりやすい犬種として、アメリカンコッカースパニエル、バセットハウンド、チャウチャウ、シャーペイ、サモエド、シベリアンハスキーを挙げています。

    緑内障は、眼球の中の圧力が上がって視神経が傷む病気で、同じ手引きは急性の緑内障を 眼科の救急疾患 とし、徴候として まぶたの痙攣、白目の充血、角膜全体の濁り、瞳孔の開き、視力の喪失 を挙げています。急性の緑内障の最初の見た目は、「急に片目の涙が増えて、目が赤くて、痛がっている」です。これを涙やけの悪化だと思って拭いている時間はありません。

    同じく緑内障の好発犬種である柴犬の記事に、見分け方を詳しく書いています。

    あわせて読みたい 柴犬の涙やけ|かゆみと緑内障、柴犬で先に確かめたい2つのこと →

    長い耳と、垂れた唇:涙やけの隣で起きること

    散歩中に長い耳を揺らして歩くアメリカンコッカースパニエル

    ここまでが目の話です。ここからは、この犬種の顔の周りで、涙やけと一緒に起きやすいことです。

    米国の標準は、被毛について 「頭は短く細い毛。体は中くらいの長さ。耳・胸・お腹・脚はよく飾り毛がある」 とし、唇について 「上唇は豊かで、下あごを覆うのに十分な深さがある」 としています。

    目の周りは、乾かしやすい犬種です。 頭の毛が短く細いので、マルチーズやトイプードルのように伸び続ける毛が涙を吸い上げる問題は小さく、拭いたあとに乾かすのも難しくありません。

    一方で、耳と唇は濡れやすい犬種です。 長い飾り毛のある耳は、水を飲むたびに濡れ、食器に入ります。下あごを覆う上唇は、よだれをためます。獣医師向けの標準的な手引きは、唇ヒダ皮膚炎を「上唇が垂れ下がり、下唇にひだがある犬種(スパニエル系、イングリッシュ・ブルドッグ、セント・バーナード)に起こる慢性の皮膚の炎症」と説明しています。米国の獣医皮膚科専門医の解説は、通気が落ちて湿った環境で微生物が増え、赤み・浸出液・悪臭を起こすと書いています。

    目の下の涙やけを拭いていて、口元や耳の付け根からにおいがする——そのときは、涙ではなく、よだれと耳です。口元の話は、よだれやけの記事にまとめています。

    あわせて読みたい よだれやけの落とし方|海外の獣医学的根拠にもとづく毎日のお手入れ →

    受診の目安チェックリスト

    当日中に受診してください。

    • 急に片目が赤い、角膜が白っぽく濁っている、痛がっている、瞳孔が開いている
    • 目を細めて、まぶたを固く閉じ気味にしている
    • 目頭に赤い塊が出ている(押し戻さないでください)
    • 角膜の表面につやがなく、粘る目やにがついて、目を開けにくそうにしている
    • 目の中や、まぶたの裏に異物が見える

    数日以内に受診してください。

    • 粘り気のある黄色〜緑色の目やにが、毎日出る
    • 目やにの性質が変わった(さらさら → 粘る)
    • 片目だけ、子犬のころから涙が多い
    • 目頭の毛がいつも濡れていて、目頭側の下まぶたが内側を向いて見える
    • 下まぶたが外側にたるんで、赤い結膜が見えている
    • 目をこする、顔を床にこすりつける
    • 口元や耳の付け根からにおいがする、赤い

    自宅でできること

    芝生の上で眠るアメリカンコッカースパニエル

    確認できた自宅ケアは「拭く」「乾かす」「毛を短くする」の3つです。 着色を消すためではなく、濡れた状態が続くことで起きる皮膚トラブルを防ぐためのものと考えてください。米国の大手動物病院チェーン(VCA)の解説でも、目の周りを清潔に乾いた状態に保ち、たまった汚れを取り、目の周りの毛を短くすることが挙げられています。

    アメリカンコッカースパニエルで大事なのは、「拭いていい状態か」を先に確かめること です。

    • 目の表面につやがあって、目を細めていない → 拭いていい状態です
    • 粘る目やにがつき、目の表面のつやがない、目を細めている → 拭く前に、涙を測ってもらう段階です

    拭いていい状態なら、順番はこうです。

    1. 乾拭きで、涙そのものを先に取る。 濡れたもので先に拭くと、涙を薄めて広げます
    2. 湿らせて、毛の根元まで届く量で拭く。 表面だけ湿らせても、涙が残っているのは根元です
    3. 仕上げに乾拭きして、乾いた状態にする。 濡れたまま置くと、着色より先に皮膚が荒れます

    頭の毛が短いこの犬種は、この3番目が難しくありません。目の下を、目頭から外側へ、乾いたコットンで押さえる だけで乾きます。

    拭き取りは、乾いた被毛をこするのではなく、湿らせて汚れをふやかしてから、力を入れずに押さえるように行います。目に液体が入らないよう、目頭から外側に向けて動かしてください。目頭の毛が伸びて目に入るようなら、トリマーか動物病院で短く整えてもらってください。目のすぐそばを自分でハサミで切るのは避けてください。

    耳と唇は、目とは別に乾かしてください。 水を飲んだあとの耳の飾り毛と、口元の唇のひだの内側を、乾いたコットンで押さえる。食事のあとと散歩のあとにこれをするだけで、口元と耳の付け根のにおいは変わります。

    濡れたまま放置するとどうなるかは、別の記事にまとめています。

    あわせて読みたい 涙やけはお手入れ不足で悪化!原因をわかりやすく解説! →

    CLEAR WATER を使う場合の手順

    当店の CLEAR WATER をお使いの場合は、目の表面につやがあり、目を細めていない ことを確かめてから、次の手順です。

    1. 乾いたコットンで、目の下の涙を先に押さえて取る
    2. コットンを指先大にちぎり、ひたひたになるまでスプレーする(顔に直接スプレーしない)
    3. コットンを軽く絞りながら、目頭から外側へ、毛の根元まで届くように優しく押さえて拭く
    4. 清潔なコットンで水気を拭き取り、乾いた状態にする
    5. 同じ手順で、口元の唇のひだの内側と、耳の飾り毛の付け根を拭き、乾かす

    着色を消すための工程ではありません。 涙とよだれが付着している時間を短くするための工程です。すでに色のついた毛は元に戻りません。だからこそ、今ある色が薄くなるのを待つのではなく、これ以上濃くしないために毎日続けます。

    ただし、繰り返しになりますが、ドライアイ・チェリーアイ・まぶた・涙点・緑内障は、拭いても変わりません。 お手入れと受診は、別の話として両方してください。

    やってはいけないこと

    粘る目やにを「涙やけの悪化」として拭き続けないでください。 この犬種でいちばん多い目の病気は、涙が足りなくなるドライアイです。涙を測ってもらってください。

    目頭の赤い塊を、押し戻したり、放置したりしないでください。 涙の40〜60%を作る腺です。切除ではなく、戻す手術が必要とされています。

    急に赤くなった片目を、涙やけとして拭かないでください。 緑内障の好発犬種に挙げられています。当日中の受診です。

    以前に処方された目薬を使い回さないでください。 角膜に傷がある状態でステロイドを含む目薬を使うと、治りが止まり、重い合併症を起こすことがあります。人間用の目薬も同じです。

    過酸化水素(オキシドール)を含む製品を目の周りに使わないでください。 VCAの解説が、目に入れば重い損傷を起こすと明確に警告しています。

    内側を向いたまつ毛を、自分で抜かないでください。 抜いても生え直しますし、まぶたを傷つけます。

    目のすぐそばを、自分でハサミやバリカンで触らないでください。 目頭の毛は、動物病院かトリマーにお願いしてください。

    「白くなる」と謳うサプリには注意が必要です。 2014年8月、米国の食品医薬品局(FDA)は涙やけ製品を販売する3社に警告書を発出しました。一部の製品にタイロシン酒石酸塩という抗菌性物質が含まれていたためです。FDAは、タイロシンは犬・猫のいかなる用途にも承認されていないと明言しています。より大きな問題は、原因を診断しないまま着色だけを消してしまうと、ドライアイやまぶたの異常という見逃してはいけないサインを覆い隠してしまう ことです。

    よくある質問

    Q. アメリカンコッカースパニエルは涙やけになりやすい犬種ですか?

    「涙が多い」より先に、「涙が足りない」を確かめたい犬種です。英国の一次診療の記録(犬36万3,898頭)を調べた研究では、ドライアイ(乾性角結膜炎)がもっとも多い犬種がアメリカンコッカースパニエルで、17頭に1頭、ミックス犬の52.33倍 でした。涙の水の部分が減ると、粘る目やにが増えて目の周りが赤茶色〜黄色に汚れ、見た目は涙やけと紛らわしくなります。ECVOの手引きには、ほかにも15の目の病気が「知られている」として載っています。VCAも、涙やけの好発犬種としてコッカースパニエルを挙げています。

    Q. 目やにが粘るようになりました。涙やけの悪化ですか?

    逆の可能性を先に確かめてください。ドライアイは、涙の水の部分が足りなくなる病気で、粘り気のある黄色〜緑色の目やに、充血、目を細める、顔をこする が徴候です。コーネル大学の解説では中年の犬にもっとも多く、英国の記録では12歳以上の犬は3歳未満の29.44倍でした。診断は涙の量を測るシルマー試験で数分、治療は涙を増やす点眼を一生続けます。放置すると角膜に血管や色素が入り、視力に関わります。

    Q. 目頭に赤い塊が出ました。

    チェリーアイ(第三眼瞼腺の脱出)です。英国の一次診療の記録(犬90万5,543頭)では、アメリカンコッカースパニエルはミックス犬の11.57倍で、最初に診断された年齢の中央値は0.63歳でした。この腺は 涙の40〜60% を作っているので、切除すると永久的なドライアイになることがあり、元の位置に戻す手術が必要とされています。押し戻したり、放置したりせず、受診してください。

    Q. 急に片目が赤くなって、痛がっています。

    当日中に受診してください。ECVOの手引きには、アメリカンコッカースパニエルの「知られている」目の病気として緑内障が載っており、Merckの手引きも原発性の緑内障になりやすい犬種としてアメリカンコッカースパニエルを挙げています。急性の緑内障は眼科の救急疾患で、徴候は まぶたの痙攣、白目の充血、角膜全体の濁り、瞳孔の開き、視力の喪失 です。涙やけの悪化として拭いている時間はありません。

    Q. 子犬のころからずっと、片目だけ涙が多いです。

    涙点(涙の出口)の閉鎖を確かめる段階です。ECVOの手引きには、アメリカンコッカースパニエルの涙点の閉鎖が「報告あり」として載っており、英国の臨床テキストは、涙点が開いていない・小さすぎる犬種として 「ゴールデン・レトリーバーとコッカー・スパニエル(イングリッシュとアメリカンの両方)は確実に過剰に代表されている」 と書いています。生まれつきで、子犬のころから、片目に偏って、拭き方を変えても変わらない、が特徴です。色素を目に入れて鼻に抜けるかを見る検査で確認できます。

    Q. フードを変えれば涙やけは減りますか?

    通常のドッグフードが涙やけを引き起こすことを示した対照試験は、確認できませんでした。アメリカンコッカースパニエルの場合、ドライアイ・チェリーアイ・まぶた・涙点・緑内障という、診察で確認できる原因がこれだけ手引きに載っています。まず、涙が多いのか足りないのかを測ってもらうところからです。 フードの見直しは、獣医師が原因を絞り込んだうえでの選択肢です。

    まとめ

    • 英国の記録で ドライアイがもっとも多い犬種。17頭に1頭、ミックス犬の 52.33倍。粘る目やには「涙やけの悪化」ではなく「涙が減った」を疑う
    • チェリーアイは11.57倍、中央値0.63歳。涙の40〜60%を作る腺なので、切除せず戻す
    • ECVOの手引きに 15の目の病気 が「知られている」として載る。睫毛重生・眼瞼内反・眼瞼外反・緑内障・白内障。涙点の閉鎖 は「報告あり」で、英国の臨床テキストはコッカーを筆頭に名指し
    • 急に片目が赤い・濁る・痛がる は緑内障の候補。当日中
    • 目の周りの毛は短く乾かしやすい。耳と唇は濡れやすい。目とは別に乾かす
    • 自宅でできるのは「拭いていい状態か確かめる」「拭く」「乾かす」。拭いても、ドライアイもチェリーアイも変わらない

    アメリカンコッカースパニエルの目の下の汚れは、「涙が多い犬種だから」で片づけていいものではありません。涙が多いのか、足りないのか。測ってもらえば、数分で分かります。

    参考文献

    • O’Neill DG, et al. Keratoconjunctivitis sicca in dogs under primary veterinary care in the UK: an epidemiological study. J Small Anim Pract. 2021. doi:10.1111/jsap.13382(英国の一次診療の記録から犬363,898頭のドライアイを調べた研究。犬種別・年齢別の危険)
    • More than one “dry eye” in the house: RVC research reveals certain dog breeds are more prone to eye disease|Veterinary Practice, 2021(上記研究の犬種別の数字についての報道)
    • ECVO Manual: Breeds 2021 – American Cocker Spaniel|European College of Veterinary Ophthalmologists(ヨーロッパの獣医眼科専門医団体による犬種別の遺伝性・好発眼疾患の手引き)
    • O’Neill DG, Yin Y, Tetas Pont R, et al. Breed and conformational predispositions for prolapsed nictitating membrane gland (PNMG) in dogs in the UK: A VetCompass study. PLoS ONE. 2022;17(1):e0260538. doi:10.1371/journal.pone.0260538(犬905,553頭におけるチェリーアイの発生と犬種別の危険)
    • Keratoconjunctivitis Sicca (KCS) in Dogs|Riney Canine Health Center, Cornell University College of Veterinary Medicine(ドライアイの原因・年齢・徴候・好発犬種・治療)
    • Cherry Eye – Should It Stay or Should It Go?|ACVO Public(米国獣医眼科専門医協会の飼い主向け解説。涙の産生割合と治療)
    • Official Standard for the Cocker Spaniel(Approved January 9, 2018)|American Kennel Club(米国の犬種標準。目・表情・頭・唇・被毛の定義)
    • Turner SM. Chronic epiphora. In: Small Animal Ophthalmology (Saunders Solutions in Veterinary Practice). Saunders Elsevier, 2008(英国の獣医眼科の臨床テキスト。涙点の閉鎖と犬種についての記述)
    • Acute Glaucoma in Small Animals|Merck Veterinary Manual(米国の獣医学の手引き。急性緑内障の徴候と好発犬種)
    • Eyelids in Animals|Merck Veterinary Manual(睫毛重生、眼瞼内反、眼瞼外反についての解説)
    • Pyoderma in Dogs and Cats|Merck Veterinary Manual(米国の獣医学の手引き。唇ヒダ皮膚炎の好発犬種についての記述)
    • Banovic F, Strzok E. Skin Fold Dermatitis (Intertrigo) in Dogs|Today’s Veterinary Practice, 2019(濡れた皮膚のひだの微生物と皮膚炎についての解説)
    • Eye Discharge or Epiphora in Dogs|VCA Animal Hospitals(米国の大手動物病院チェーン。好発犬種と自宅ケア、過酸化水素についての警告)
    • Corneal Ulcers in Dogs|VCA Animal Hospitals(ステロイドを含む目薬についての警告)
    • Tear Staining in Dogs|MedVet(米国の動物病院グループ。ポルフィリンについての解説)
    • FDA warns makers of unapproved tear stain products|AVMA / JAVMA News, 2014

    免責事項

    本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、診断ではありません。愛犬の症状については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。記載内容は執筆時点で確認できた情報にもとづいており、個々の犬に当てはまるとは限りません。目の症状は進行が早いことがあります。判断に迷う場合は、記事を読み進めるより先に動物病院へご連絡ください。

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    記事執筆者・監修者

    西尾 亮佑 西尾 亮佑
    西尾 亮佑

    【ペット業界15年以上】横浜ペットコミュニティ専門学院にてトリミング・訓練を学び、大手ペットショップ・ペットメーカーに勤務。数多くのペットショップ・トリミングサロン・動物病院を視察してきました。

    その中でペット業界の矛盾の多さや利益優先の姿勢に疑問を持ち、愛犬・愛猫の健康面を最優先に考える想いを貫くため2020年7月15日にDog&Cat CLEARを設立。愛猫21匹と愛犬2匹と暮らしながら『愛犬・愛猫の健康は飼い主が守る』を発信しています。

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