トイプードルの涙やけ|涙が多いのか、出口が閉じているのか
- この記事について
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海外の獣医学的に涙やけをどう捉えるのかをまとめて参照した内容となります!
これはこういうのはあった。これはどうだろう?という僕の経験則の部分はまた随時更新いたします!
- こんな人にオススメな内容
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- トイプードルの目の下が茶色く変色して、拭いても戻らない
- 子犬のころからずっと涙が多い
- トリミングしても涙やけが消えない
- 調べても情報が多すぎて、何がプードルの話なのか分からない
- プードルは、原因が「遺伝性」として載っている犬種です
- 涙やけには「増える」と「出ていけない」の2系統があります
- 増える側:まつ毛が、生えてはいけない場所から生えています
- すべてに処置が必要なわけではありません
- 処置の選択肢
- 出ていけない側:涙の出口が、生まれつき閉じているか小さすぎます
- ポメラニアンの記事との違い
- 両方が重なる「涙あふれ症候群」
- 手術で治した23頭のうち、トイプードルは1頭でした
- どちらなのかは、診察で分けられます
- 唯一の対照試験には、プードルが12頭いました
- 巻き毛が、涙を吸い上げて広げます
- 受診の目安チェックリスト
- 自宅でできること
- CLEAR WATER を使う場合の手順
- やってはいけないこと
- よくある質問
- まとめ
- 参考文献
- 免責事項
トイプードルの目の下が、赤茶色に変わっている。拭いても戻らない。トリミングしても消えない。調べると情報が山ほど出てくるけれど、どれがプードルの話なのか分からない——そう検索してこのページにたどり着いた方に向けて書いています。
情報が多いのには理由があります。トイプードルは、日本でいちばん多く飼われている犬種です。 ジャパンケネルクラブの2025年の登録頭数は 69,342頭 で、2位のチワワ(46,221頭)を大きく引き離しています。飼い主が多いぶん、記事も多い。ただしその多くは、犬種を問わない一般論をプードルの見出しで書き直したものです。
この記事では、プードルについて獣医学の資料が実際に何を言っているか だけを書きます。海外の獣医学的な情報源を確認したうえで、順に整理します。本文で触れている資料の出典は、すべて記事末尾の参考文献に挙げています。
先に結論だけお伝えします。
- プードルは、涙やけの原因が 「遺伝性が知られている、または推定される」ものとして手引きに載っている犬種 です。しかも複数
- 涙やけの原因は 「涙が増える」と「涙が出ていけない」の2系統 に分かれます。プードルでは 両方 が挙がっています
- 増える側:睫毛重生。まつ毛が本来ない場所から生えて角膜に当たります。手引きは「すべてのサイズでよくある」と明記
- 出ていけない側:涙点閉鎖。涙の出口が生まれつき開いていない、または小さすぎます。英国の臨床テキストは ミニチュアとトイのプードルを名指し
- どちらなのかは診察で分けられます。 シルマー涙液試験が正常で不快感がなければ「出ていけない」側です
- プードルの 細かく巻いた毛は、涙を吸い上げて広げます。 テキストは「重要な寄与因子」と書いています
プードルは、原因が「遺伝性」として載っている犬種です

ヨーロッパの獣医眼科専門医の団体が、犬種ごとに遺伝性・好発の目の病気をまとめた手引きを出しています。そのプードルの項から、涙やけに直接関わるものを抜き出します。
| 挙げられているもの | 分類 | どのサイズか | 手引きの記載 |
|---|---|---|---|
| 睫毛重生(まつ毛が本来ない場所から生える) | 遺伝性が知られている/推定される | すべて | 「よくある(すべてのサイズ)」 |
| 涙点閉鎖(涙の出口が開いていない) | 遺伝性が知られている/推定される | — | — |
| 角膜ジストロフィー(上皮型) | 遺伝性が知られている/推定される | トイ・ミニチュア | 「1歳ごろに臨床症状」 |
| トリチアシス(正常な毛が眼球に当たる) | 報告あり | — | — |
注目してほしいのは2点です。
ひとつは、睫毛重生に「よくある」と書かれている こと。他の犬種の項では病名が並ぶだけのことが多く、頻度まで書かれているのは珍しい扱いです。
もうひとつは、涙点閉鎖が「遺伝性が知られている/推定される」の分類に入っている こと。ポメラニアンの記事では、若い犬全般では頻度の高い原因ではないと書きました。それは今も正しいのですが、プードルでは手引きの位置づけが違います。
涙やけには「増える」と「出ていけない」の2系統があります

ここから先を読むうえで、いちばん大事な枠組みです。
英国の獣医眼科の臨床テキストは、慢性の流涙をこう分けています。
| 系統 | 何が起きているか | 主な原因 |
|---|---|---|
| 涙が出ていけない(排出の問題) | 涙の量は普通。出口が機能していない | 涙点が開いていない・小さい、目頭側のまぶたの内反、目頭の毛が涙を吸い上げる、まぶたと眼球が密着しすぎて排出が落ちる |
| 涙が増える(産生の問題) | 刺激で涙が過剰に出ている | 眼瞼内反、睫毛重生、異所性睫毛、角膜の傷 |
出典:英国の獣医眼科の臨床テキスト(詳細は末尾の参考文献)
プードルは、この両方に名前が挙がる犬種です。 上の表に当てはめると、睫毛重生は「増える」側、涙点閉鎖は「出ていけない」側です。
だから「プードルの涙やけの原因はこれ」と一言では言えません。うちの子はどちら側なのか。 ここを分けるところから始まります。
涙があふれるしくみそのものについては、別の記事にまとめています。
あわせて読みたい 犬の涙やけの原因は?海外の獣医学的な根拠と受診の目安を解説 →増える側:まつ毛が、生えてはいけない場所から生えています

睫毛重生(じゅうもうじゅうせい) について、もう少し詳しく書きます。
まぶたのふちには、涙の油分を出す マイボーム腺 という小さな腺が並んでいます。睫毛重生は、この腺の出口から、本来生えるはずのないまつ毛が生えてくる状態 です。フロリダ大学の獣医眼科専門医は「マイボーム腺の底で生じ、その開口部から出て、角膜に接触しうる」と説明しています。
つまり 正常なまつ毛の列とは別の場所 から、眼球に向かって毛が出ています。角膜に当たれば刺激になり、刺激されれば涙が増えます。
同じ専門医が挙げている症状は、こうです。
- 持続的または断続的に目を細める
- まばたきの回数が増える
- 流涙。涙やけをともなうことも、ともなわないこともある
「涙やけをともなうことも、ともなわないこともある」——専門医の解説に、涙やけという言葉が明記されています。
好発犬種として挙げられているのは、アメリカン・コッカー・スパニエル、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル、キャバリア、フラットコーテッド・レトリーバー、イングリッシュ・ブルドッグ、シーズー、プードル、ダックスフンド、パーソン・ラッセル・テリアです。
すべてに処置が必要なわけではありません
ここは正確に書いておきます。
同じ専門医は、毛が柔らかく刺激になっていない場合は「何もしないのが望ましい」 としています。処置が検討されるのは、毛が不快感を起こしている場合や、角膜のびらん・潰瘍を悪化させている場合です。
つまり、睫毛重生が見つかった=すぐ処置、ではありません。その毛が実際に悪さをしているかどうか を、診察で判断します。
処置の選択肢
処置が必要と判断された場合の選択肢は、次のとおりです。
| 方法 | 内容 | 持続 |
|---|---|---|
| 手で抜く | 4〜6週ごとに繰り返す | 一時的。生え直します |
| 凍結による除去(クライオ) | 毛根を凍らせて破壊する | 永久的。もっとも一般的 |
| 電気による除去 | 毛根を電気で破壊する | 永久的 |
| 外科的切除 | 該当部分を切除する | 永久的 |
「手で抜く」が一時的だという点は、後述する「やってはいけないこと」につながります。
生えてはいけない場所からのまつ毛は、キャバリアでも報告があります。フランスの専門クリニックの記録では受診したキャバリアの17.8%でしたが、85%は刺激になっていませんでした。「あるのに問題にならない」場合の考え方は、こちらに書いています。
あわせて読みたい キャバリアの涙やけ|涙が多いのではなく、足りなくなる犬種です →出ていけない側:涙の出口が、生まれつき閉じているか小さすぎます

涙は、目頭の内側にある 涙点 という小さな穴から鼻へ抜けていきます。上まぶたと下まぶたに1つずつあり、涙の排出は主に下の涙点が担っています。
涙点閉鎖 は、この穴が生まれつき開いていない状態です。行き場のない涙は、そのまま顔へこぼれ続けます。
英国の臨床テキストは、涙点が開いていない・小さすぎる犬種について、こう書いています。
「ゴールデン・レトリーバーとコッカー・スパニエル(イングリッシュとアメリカンの両方)は確実に過剰に代表されており、おそらくキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ミニチュアおよびトイ・プードル、サモエド、ベドリントン・テリアも同様である」
ミニチュアとトイのプードルが、名指しで入っています。
ヨーロッパの獣医眼科専門医の団体の犬種別の手引きでは、ボストンテリアでも涙点の閉鎖が報告されています。犬種は違っても、「子犬のころからずっと、片目に偏って、拭いても変わらない」という見え方は同じです。
あわせて読みたい ボストンテリアの涙やけ|白い口まわりの跡と、5〜9歳から曇る角膜 →そしてもうひとつ、見落とされやすい記載があります。プードルを含む小型犬について、「涙点はしばしば、もともと小さい」 と書かれていることです。完全に閉じていなくても、出口が細ければ排出は追いつきません。
ポメラニアンの記事との違い
ポメラニアンの記事では、獣医師向けの標準的な手引きを引いて「若い犬の流涙の原因としては、頻度の高いものではない」と書きました。犬全般の話としては、その通りです。
ただしプードルでは、犬種別の手引きが遺伝性として分類し、臨床テキストが犬種名を挙げています。 「まれだから考えなくていい」ではなく、「この犬種では確認する価値がある」側に入ります。
あわせて読みたい ポメラニアンの涙やけ|片目だけなら原因が違います →手引きに下まぶたの涙点の閉鎖が「知られている」と載っている犬種は、ほかにパピヨンがあります。子犬のころから片目に偏る、という見え方も同じです。
あわせて読みたい パピヨンの涙やけ|白いブレーズに跡が残る理由と、手引きに載る3つの目の構造 →両方が重なる「涙あふれ症候群」
英国の臨床テキストには、プードルの名前が出てくる箇所がもうひとつあります。
「ミニチュアおよびトイ・プードル、マルチーズなどに見られる涙あふれ症候群(tear overflow syndrome)は、ブリーダーが意図的に選んできたこれらの犬の頭のかたちと目の外見に一因がある」
続けて、こう説明されています。
「小さく、張りつめたまぶたは、目頭側の眼瞼内反と、しばしばもともと小さい涙点の物理的な閉塞につながりうる」
つまり、こういう連鎖です。
- 小さな頭に、大きく見える目。まぶたが張りつめている
- 張りつめたまぶたが、目頭側で内側に巻き込む
- 巻き込んだまぶたが、もともと小さい涙点を 物理的にふさぐ
- 同時に、巻き込んだまぶたの毛が眼球に当たって 刺激になる
「出ていけない」と「増える」が、同じ構造から同時に起きる。 これが「症候群」と呼ばれている理由です。
手術で治した23頭のうち、トイプードルは1頭でした
この症候群に対して、目頭側を手術で整える方法があります。韓国のソウル大学のチームが、涙があふれることを理由に手術を受けた犬23頭を追った研究を2006年に報告しています。
内訳は、シーズー15頭、ペキニーズ4頭、マルチーズ2頭、トイプードル1頭、パグ1頭。目頭の毛が眼球に当たっている状態が 91.3%、目頭側のまぶたが内側に巻き込んでいる状態が 82.6% に見つかり、手術のあと、涙があふれる症状は 23頭すべてで消えました。
正直に書きます。トイプードルは23頭中1頭です。 この研究からプードルについて言えることはほとんどありません。ただ、テキストが名指しした症候群に、実際にプードルが含まれていたという事実は残ります。
どちらなのかは、診察で分けられます

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい実務的な内容です。
「増える」のか「出ていけない」のか。飼い主が見た目で判断するのは難しいのですが、診察では分けられます。
臨床テキストの判断基準は、明快です。
「シルマー涙液試験の値が正常で、目の不快感の徴候がなければ、通常は流涙症(排出の問題)と考えてよい」
つまり、順番はこうです。
| 検査 | 何を見るか | 分かること |
|---|---|---|
| シルマー涙液試験 | 細い紙をまぶたに1分挟み、涙の量を測る | 涙が 多いのか、普通なのか |
| 目の不快感の確認 | 目を細める、まばたきが多い、こする | 刺激で 増えている のか |
| フルオレセイン染色 | 緑の色素を目に入れ、鼻から出てくるかを見る | 出口が 通っているか |
| 涙管洗浄 | 涙点から生理食塩水を流す | 通り道が 詰まっていないか |
涙の量が普通で、不快感もない。それなのにあふれている。それは「出ていけない」側です。 涙点が開いているか、小さすぎないか、まぶたがふさいでいないかを見ます。
涙の量が多い、あるいは目を細めている。それは「増える」側です。 まつ毛、まぶた、角膜を見ます。
どちらも、特別な機械は要りません。プードルは、調べれば原因が分かる可能性の高い犬種です。
唯一の対照試験には、プードルが12頭いました
涙やけを評価項目にした対照試験は、調べた範囲では1件だけです(2026年、中国の研究チーム)。生薬エキスを加えた飼料で、着色スコアの変化を28日間追ったものです。
その40頭の内訳は、ビションフリーゼ28頭、プードル12頭 でした。4つのグループに分けているので、プードルは1グループあたり3頭 です。
結果として、3種類のエキスすべてで着色スコアが38〜49%下がったと報告されています。ただし正直に書くと、プードル3頭からプードルについて言えることは、ほぼありません。 著者らも試験期間の短さを限界として挙げています。
この研究について、ビション側の視点で詳しく書いた記事があります。
あわせて読みたい ビションフリーゼの涙やけ対策|研究データと毎日のケア →そして最も大事な点として、これは「特定の成分を足したら着色が減った」という研究であって、「通常のフードが着色を起こす」ことを示した研究ではありません。 フードを変える前に、上に書いた「増える」「出ていけない」の切り分けが先です。
巻き毛が、涙を吸い上げて広げます

原因とは別に、プードルには「悪化しやすい条件」があります。
英国の臨床テキストは、はっきり書いています。
「プードルの細かく巻いた毛は、涙あふれの重要な寄与因子である」
プードルの毛は、抜け替わらずに伸び続けます。目頭の毛も例外ではありません。伸びた毛は、あふれた涙を吸い上げ、毛づたいに頬へ広げ、そこに留めます。同じテキストは、涙点の上に 「涙を吸い上げてしまう毛がないか」 を確認するよう勧めています。
だからプードルでは、目頭の毛を短く保つことが、他の犬種以上に意味を持ちます。 トリミング犬種であることが、ここでは有利に働きます。
ただし、冒頭の問いに戻ります。「トリミングしても消えない」 のであれば、毛が広げる経路は減らせているのに、まつ毛か出口の問題が残っている、ということかもしれません。カットで変わらないことは、それ自体が手がかりです。
受診の目安チェックリスト
ひとつでも当てはまれば、動物病院にご相談ください。
- 子犬のころからずっと涙が多い
- 目の周りの毛を短くしても、涙やけの濃さが変わらない
- 目を細めている、まばたきが多い
- 白目が充血している
- 角膜が白っぽく濁っている
- 前足で目をこする、床や家具に顔をこすりつける
- 急に涙の量が増えた
- 片目だけ涙やけが濃い、左右差がはっきりある
- まぶたのふちに、正常なまつ毛とは別の毛が見える
- 黄色〜緑色の膿のような目やにが出る
- 目の下の皮膚が赤い、ただれている、においが強い
2つ目は、プードルに固有の手がかりです。 毛を減らしても変わらないなら、原因は毛ではありません。
自宅でできること

確認できた自宅ケアは「拭く」「乾かす」「毛を短くする」の3つです。 着色を消すためではなく、濡れた状態が続くことで起きる皮膚トラブルを防ぐためのものと考えてください。すでに色のついた毛は元に戻りません。変わるのは、これから生えてくる毛です。
米国の大手動物病院チェーンの飼い主向け解説でも、この3点が基本として挙げられています。
- 目の周りを清潔に保つ(拭く)
- 拭いたあとは乾いた状態に保つ(乾かす)
- 目の周りの被毛を短くカットする
プードルでは、3つ目の「毛を短くする」がもっとも直接的です。 上に書いたとおり、巻き毛が涙を広げる経路そのものを減らせます。トリミングのたびに、目頭の毛を短めにお願いしておくと続けやすくなります。
拭き取りは、乾いた被毛をこするのではなく、湿らせて汚れをふやかしてから、力を入れずに押さえるように 行います。目に液体が入らないよう、目頭から外側に向けて動かしてください。
そして、拭いたあとに乾かすところまでが1セット です。巻き毛は内側に湿りを抱え込みます。表面が乾いていても、毛を軽く分けて下の層まで水気を取ってください。
CLEAR WATER を使う場合の手順
当店の CLEAR WATER をお使いの場合は、次の手順です。
- コットンを指先大にちぎる
- ひたひたになるまでスプレーする
- コットンを軽く絞りながら、目の周りを優しくマッサージするように拭く
- 毛を軽く分けて、内側の層まで水気を拭き取る
- 涙の量に応じて回数を調整する
拭かなかった日のぶんだけ、新しい着色が積み重なります。 今ある色が薄くなるのを待つのではなく、これ以上濃くしないために毎日続けるものです。
毛の長い子でこの手順を続けて変化が出た例を、別の記事にまとめています。テキストがプードルと並べて挙げていたマルチーズの子です。
あわせて読みたい マルチーズの涙やけ改善方法|お手入れ3ステップで変わった実例 →テキストがプードルと並べて挙げているマルチーズそのものの構造——目頭側の下まぶたの巻き込み、涙の出口の形成不全、5〜7歳からのドライアイ——は、こちらにまとめています。
あわせて読みたい マルチーズの涙やけ|白い毛で目立つ理由と、目頭のまぶたが巻き込む理由 →やってはいけないこと
まぶたのふちの毛を、自分で抜かないでください。 睫毛重生の毛は、抜いても4〜6週間で生え直します。一時しのぎにしかならないうえ、まぶたを傷つけるおそれがあります。処置が必要かどうかの判断も、永久的な処置も、動物病院で行うものです。
目のすぐそばの毛を、自分でハサミで切らないでください。 プードルは目頭の毛が伸びやすい犬種だからこそ、自分で切りたくなります。動きやすい犬ほど危険です。目のまわりはトリマーか動物病院にお願いしてください。
点眼薬は、以前に処方されたものであっても獣医師の指示なく使わないでください。 原因が特定できていない状態で薬を使うと、角膜に傷がある場合などに悪化させるおそれがあります。人間用の目薬も同様です。
「白くなる」と謳うサプリには注意が必要です。 2014年8月、米国の食品医薬品局(FDA)は涙やけ製品を販売する3社に警告書を発出しました。一部の製品にタイロシン酒石酸塩という抗菌性物質が含まれていたためです。FDAは、タイロシンは犬・猫のいかなる用途にも承認されていないと明言しています。2017年5月にも、別の1社に同じ理由で警告書が出されています。
より大きな問題は、原因を診断しないまま着色だけを消してしまうと、見つければ対処できる原因を覆い隠してしまう ことです。まつ毛と涙の出口という、診察で分かる原因が挙がっているプードルでは、とくにもったいない話です。
よくある質問
Q. トイプードルは涙やけになりやすい犬種ですか?
はい。犬種別の手引きは睫毛重生を「すべてのサイズでよくある」と明記し、涙点閉鎖も遺伝性として挙げています。英国の臨床テキストは、涙の出口が小さい犬種としてミニチュアとトイのプードルを名指ししています。
Q. 涙が多いのと、涙が出ていけないのは、どう違うのですか?
涙やけの原因は「増える」と「出ていけない」の2系統に分かれ、プードルでは両方が挙がっています。シルマー涙液試験で涙の量が正常、かつ目に不快感がなければ、「出ていけない」側と判断されます。
Q. 睫毛重生とは何ですか?
まぶたのふちの脂の腺(マイボーム腺)の出口から、本来ないはずのまつ毛が生える状態です。角膜に当たれば涙が増えます。ただし、毛が柔らかく刺激になっていないなら「何もしないのが望ましい」 とされています。
Q. まつ毛を自分で抜いてもいいですか?
おすすめしません。4〜6週間で生え直しますし、まぶたを傷つけるおそれがあります。
Q. トリミングしても涙やけが消えないのはなぜですか?
毛を短くするのは「毛が涙を広げる」経路を減らすものです。まつ毛が当たっている、出口が閉じている、といった原因はカットでは変わりません。 変わらないなら、原因はそちら側かもしれません。
Q. 片目だけ涙やけが濃いのですが。
犬種の構造が原因なら左右同じように出るのが自然です。片目だけなら、その目に固有の理由——片側の涙点だけ閉じている、片側だけまつ毛が当たっている——が考えられます。診察で確認できます。
片目だけの涙やけで確かめる4か所と、涙の性質・痛みのサインによる見分け方は、別の記事にまとめています。
あわせて読みたい 片目だけの涙やけ|左右差が教えてくれる、目・涙の通り道・歯・鼻の4つの原因 →まとめ
- トイプードルは日本でいちばん多い犬種です。情報は多いですが、プードルについて資料が言っていることは限られています
- プードルは、涙やけの原因が 「遺伝性」として複数、手引きに載っている犬種 です
- 原因は 「増える」と「出ていけない」の2系統。プードルでは両方が挙がっています
- 増える側:睫毛重生。 手引きは「すべてのサイズでよくある」と明記。ただし柔らかい毛なら処置は不要です
- 出ていけない側:涙点閉鎖。 臨床テキストがミニチュアとトイのプードルを名指し。「もともと小さい」ことも多い
- どちらなのかは診察で分けられます。 シルマー正常+不快感なし=出ていけない側
- 巻き毛は涙を吸い上げて広げます。 目頭の毛を短く保つことが、他の犬種以上に効きます
- トリミングしても変わらないなら、それ自体が手がかりです。 原因は毛ではありません
トイプードルの涙やけは、「犬種だから」で片づけるには、原因が具体的すぎます。 まつ毛か、出口か。どちらも診察で分かります。拭き続ける前に、一度分けてもらってください。
参考文献
- ECVO Manual: Breeds 2021 – Poodle|European College of Veterinary Ophthalmologists(ヨーロッパ獣医眼科専門医協会による犬種別の手引き)
- Plummer CE. Distichiasis: Guide to Signs, Diagnosis, & Treatment|Clinician’s Brief(米国獣医眼科専門医、フロリダ大学)
- Turner SM. Chronic epiphora. In: Small Animal Ophthalmology (Saunders Solutions in Veterinary Practice). Saunders Elsevier, 2008(英国の獣医眼科の臨床テキスト)
- Yi NY, Park SA, Jeong MB, Kim MS, Lim JH, Seo K. Medial Canthoplasty for Epiphora in Dogs: A Retrospective Study of 23 Cases. J Am Anim Hosp Assoc, 2006;42:435-439(ソウル大学獣医眼科)
- Wang E, et al. Effects of Traditional Chinese Herbal Extracts on Tear Staining, Iron Status, Immune Function, and Antioxidant Capacity in Dogs. Animals, 2026;16(11):1596. DOI: 10.3390/ani16111596
- Nasolacrimal and Lacrimal Apparatus in Animals|Merck Veterinary Manual(獣医師向けの標準的な手引き)
- Eye Discharge or Epiphora in Dogs|VCA Animal Hospitals(米国の大手動物病院チェーン)
- Tear Staining in Dogs|MedVet(米国の動物病院グループ)
- 犬種別犬籍登録頭数(2025年1〜12月)|一般社団法人ジャパンケネルクラブ
- FDA warns makers of unapproved tear stain products|AVMA / JAVMA News, 2014
- FDA Warning Letter: Merit Pet Products, LLC(2017年5月12日)
免責事項
本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、診断ではありません。愛犬の症状については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。記載内容は執筆時点で確認できた情報にもとづいており、個々の犬に当てはまるとは限りません。
記事執筆者・監修者
- 西尾 亮佑
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【ペット業界15年以上】横浜ペットコミュニティ専門学院にてトリミング・訓練を学び、大手ペットショップ・ペットメーカーに勤務。数多くのペットショップ・トリミングサロン・動物病院を視察してきました。
その中でペット業界の矛盾の多さや利益優先の姿勢に疑問を持ち、愛犬・愛猫の健康面を最優先に考える想いを貫くため2020年7月15日にDog&Cat CLEARを設立。愛猫21匹と愛犬2匹と暮らしながら『愛犬・愛猫の健康は飼い主が守る』を発信しています。