ブルドッグの涙やけと目の病気|チェリーアイ27倍・ドライアイ12倍、英国の記録が示すこと
- この記事について
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海外の獣医学的に涙やけをどう捉えるのかをまとめて参照した内容となります!
これはこういうのはあった。これはどうだろう?という僕の経験則の部分はまた随時更新いたします!
- こんな人にオススメな内容
-
- ブルドッグの目頭に赤い塊が出た、または出たことがある
- 目の下や鼻のシワが、いつも湿っていて赤茶色に染まっている
- 目やにが粘るようになった、白目が赤い
- 「ブルドッグの目」で検索して、何が起きているのか知りたい
- 英国のブルドッグ2,662頭の記録で、目に何が起きていたか
- 目頭の赤い塊:チェリーアイ
- 4〜7歳から、涙が足りなくなる:ドライアイ
- まぶた:外側は巻き込み、内側はたるんでいます
- 涙の通り道は坂道。でも、詰まってはいません
- 鼻のシワ:涙がたまり、皮膚炎になる場所
- 白い顔で目立ち、よだれと重なります
- 受診の目安チェックリスト
- 自宅でできること
- CLEAR WATER を使う場合の手順
- やってはいけないこと
- よくある質問
- まとめ
- 参考文献
- 免責事項
ブルドッグの目頭に、赤い塊が出た。目の下や鼻のシワがいつも湿っていて、赤茶色に染まっている。目やにが粘るようになった——「ブルドッグの目」で検索してこのページにたどり着いた方に向けて書いています。
ブルドッグ(イングリッシュ・ブルドッグ)の涙やけについて、最初にお伝えしたいことがあります。
この犬種では、涙やけの手前に、目の病気そのものが並んでいます。 チェリーアイ、まぶたの巻き込みとたるみ、ドライアイ、皮膚のシワの皮膚炎——どれも英国の一次診療の記録で「他の犬の10倍以上」という数字が出ているものです。涙やけは、その結果として現れます。だから、着色を消そうとする前に、その手前で何が起きているかを確かめてください。
海外の獣医学的な情報源を確認したうえで、順に整理します。本文で触れている資料の出典は、すべて記事末尾の参考文献に挙げています。
先に結論だけお伝えします。
- 英国の一次診療の記録でブルドッグ2,662頭を調べた研究(2022年)では、75.8%に何らかの病気 があり、チェリーアイは他の犬の26.79倍、ドライアイは12.24倍、まぶたの巻き込みは11.61倍、皮膚のシワの皮膚炎は38.12倍 でした
- ヨーロッパの獣医眼科専門医の団体(ECVO)の手引きには、ブルドッグの目の病気として 下まぶた外側の巻き込み(2歳未満)、下まぶた内側のたるみ、睫毛重生(3か月〜1歳)、異所性睫毛、チェリーアイ(生後2〜6か月)、ドライアイ(4〜7歳) が載っています
- CTで測った涙の通り道は、正常な頭の形の犬の112°に対して ブルドッグは84.3° の坂道でした。ただし、詰まってはいません
- 鼻のシワ は、涙と皮脂がたまって空気が通らない場所です。においと赤みは、着色より先に起きる皮膚炎のサインです
- 自宅でできるのは「拭く」「乾かす」「シワの内側まで乾かす」。目頭の赤い塊と、粘る目やには、拭くたびに一緒に見てください
英国のブルドッグ2,662頭の記録で、目に何が起きていたか

英国の一次診療施設の記録(VetCompass)から、2016年に診療を受けた犬90万5,544頭のうち、ブルドッグ2,662頭と、ブルドッグ以外の犬2万2,039頭を無作為に選んで比べた研究(2022年)があります。ブルドッグの年齢の中央値は 2.65歳 と若く、それでも 75.8% に、その1年のあいだに何らかの病気が記録されていました。
この研究で、ブルドッグが他の犬より多かった病気のうち、目と顔に関わるものを挙げます。
| 病気 | ブルドッグ | ブルドッグ以外 | 何倍か |
|---|---|---|---|
| 皮膚のシワの皮膚炎 | 8.2% | 0.2% | 38.12倍 |
| 第三眼瞼腺の脱出(チェリーアイ) | 5.7% | 0.2% | 26.79倍 |
| 乾性角結膜炎(ドライアイ) | 3.7% | 0.3% | 12.24倍 |
| 眼瞼内反(まぶたの巻き込み) | 3.9% | 0.3% | 11.61倍 |
| 短頭種気道症候群 | 4.2% | 0.2% | 19.20倍 |
出典:O’Neill らの研究(2022年)。数字は2016年の1年間に記録された割合
この表の見方は、こうです。ブルドッグの目の周りが濡れて赤茶色に染まっているとき、その手前で、この4つのどれかが起きている確率が、他の犬より一桁多い。 涙やけは、着色として見えている結果です。原因は、この表の中にあります。
順に見ていきます。
目頭の赤い塊:チェリーアイ

ブルドッグの飼い主さんが、いちばん最初に出会う目の病気が、これです。
ECVOが犬種ごとに遺伝性・好発の目の病気をまとめた手引きの2021年版で、ブルドッグの項には 第三眼瞼腺の脱出(チェリーアイ) が「知られている」病気として載り、発症は 「若い犬。通常は生後2〜6か月」 とされています。
英国の一次診療の記録で犬90万5,543頭を調べた別の研究(2022年)では、チェリーアイの年間の発生は犬全体で0.20%でしたが、犬種別に見ると ブルドッグは他の犬の24.08倍 で、ナポリタン・マスティフに次いで2番目に高い数字でした。最初に診断された年齢の中央値は 0.63歳。短頭種全体では、普通の頭の形の犬の6.71倍でした。
米国獣医眼科専門医協会(ACVO)の解説では、この腺は 涙の40〜60% を作っています。だから、切除すると永久的なドライアイになることがあり、脱出した腺は決して切除せず、元の位置に戻す手術が必要 とされています。
ブルドッグでチェリーアイを「見た目の問題」として放置したり、切除で済ませたりすると、次の章のドライアイに直結します。涙やけの記事でチェリーアイを最初に書くのは、この犬種では、涙の量を決める腺の話が最初に来るからです。目頭の赤い塊を見つけたら、押し戻さず、放置せず、受診してください。
同じ「知られている」病気として、ボストンテリアの記事にもチェリーアイの話を書いています。
あわせて読みたい ボストンテリアの涙やけ|白い口まわりの跡と、5〜9歳から曇る角膜 →ビーグルも、手引きにチェリーアイが載っている犬種です。涙の40〜60%を作る腺を、切除せずに戻す——その点は同じです。
あわせて読みたい ビーグルの涙やけ|大きく優しい目と、1歳で静かに始まる緑内障 →4〜7歳から、涙が足りなくなる:ドライアイ

ECVOの手引きは、ブルドッグの乾性角結膜炎(ドライアイ)を 「4〜7歳で発症。両目に、進行性」 としています。
英国の一次診療の記録で犬36万3,898頭を調べた研究(2021年)では、ドライアイは犬全体の0.4%でしたが、ブルドッグは他の犬の37.95倍 で、アメリカン・コッカースパニエルに次いで2番目に高い数字でした。短頭種全体では普通の頭の形の犬の3.63倍、12歳以上の犬は3歳未満の29.44倍でした。
「涙やけの記事でドライアイ?」と思われるかもしれません。ただ、ここは見落とされやすいところです。涙の水の部分が減ると、目の表面を守るために 粘り気のある目やに が増えます。それが目の周りの毛について乾き、赤茶色〜黄色っぽく汚れます。涙やけと見た目が紛らわしいのに、中身は逆 です。
若いころは涙が多くて涙やけだった子が、4歳を過ぎて目やにが粘るようになったら、「涙やけが悪化した」ではなく「涙が減った」を疑ってください。涙の量を測る検査(シルマー試験)は数分で終わります。ドライアイは放置すると角膜を傷めますが、点眼で管理できる病気です。
「涙が足りない側」の話は、キャバリアの記事にまとめています。
あわせて読みたい キャバリアの涙やけ|涙が多いのではなく、足りなくなる犬種です →ブルドッグより確率の高い犬種は、アメリカンコッカースパニエル(52.33倍)だけです。チェリーアイも高い、という組み合わせも同じです。
あわせて読みたい アメリカンコッカースパニエルの涙やけ|ドライアイ52倍・チェリーアイ12倍、手引きに15の目の病気が載る犬種 →まぶた:外側は巻き込み、内側はたるんでいます

ECVOの手引きには、ブルドッグのまぶたについて、2つの項目が並んでいます。
- 眼瞼内反(巻き込み):「主に下まぶたの外側、ときに上まぶたの外側」。発症は2歳未満
- マクロブレファロンをともなう眼瞼外反(たるみ):「下まぶたの内側」
つまり、同じ下まぶたが、外側では内側に巻き込み、内側(目頭側)ではたるんで開いている ということです。まぶたの開きが大きすぎて(マクロブレファロン)、まぶたの縁が眼球に沿わない。これが、ブルドッグの目で同時に3つのことを起こします。
- 巻き込んだ外側では、毛が角膜に当たって涙が増える
- たるんだ内側では、涙をためておけず、涙がこぼれる。涙の出口(涙点)も、眼球から離れて働きにくくなる
- 開きが大きいぶん、まぶたが閉じきらず、角膜が乾く
英国の一次診療の記録で犬225万417頭を調べた研究(2025年)では、眼瞼内反は犬全体で年間0.33%でしたが、ブルドッグは4.65% と、およそ14倍でした。手術で治療されたのは全体の18.2%で、診断の年齢の中央値は2.02歳です。
手引きには、さらに 睫毛重生(3か月〜1歳の若い犬)と 異所性睫毛(若い犬。上まぶたの結膜側)も載っています。まぶたの縁や裏側から生えたまつ毛が角膜に当たり、涙を増やし、傷をつけます。
ここまでをつなげると、ブルドッグの角膜が置かれている状況が見えてきます。開きすぎて乾く角膜に、巻き込んだまぶたの毛と、生えてはいけない場所のまつ毛が当たる。英国の記録では、短頭種の角膜潰瘍の危険は、短頭種以外の11.18倍 でした。「急に片目を細めて涙が増えた」は、この犬種では角膜の傷を第一候補にしてください。
涙の通り道は坂道。でも、詰まってはいません
「短頭種は鼻涙管が詰まりやすい」という説明をよく見かけます。ドイツのチームが、パグ23頭、フレンチブルドッグ18頭、イングリッシュブルドッグ10頭と、正常な頭の形の犬6頭 について、造影CTで涙の通り道を三次元的に再構成した研究(2021年)があります。
| 項目 | イングリッシュブルドッグ | 正常な頭の形の犬 |
|---|---|---|
| 鼻涙管の曲がる角度 | 84.3° | 112.0° |
| 全体の形 | 逆U字またはV字 | L字 |
出典:Sahr らの研究(2021年)。角度は平均値
管は短く押しつぶされ、通り道は逆U字に曲がり、涙は坂を上らされています。ところが、詰まってはいませんでした。 鼻涙管の途中には「副開口部」という別の出口があり、短頭種51頭のうち50頭(98%)で確認されています。短頭種の54%では、本来の出口がほとんど機能せず、この副開口部が涙の唯一の出口になっていました。
ブルドッグの涙が抜けにくいのは「詰まっている」からではなく、出口が本来の場所になく、通り道が坂道になっている からです。この研究とフレンチブルドッグの目については、フレンチブルドッグの記事に詳しく書いています。
あわせて読みたい フレンチブルドッグの涙やけ|涙が多いのに、目は乾いています →鼻のシワ:涙がたまり、皮膚炎になる場所

ブルドッグの顔には、鼻の上に深いシワ(ノーズロープ)があり、目の下にもひだがあります。目からこぼれた涙は、このシワに流れ込みます。
最初の表に戻ってください。皮膚のシワの皮膚炎は8.2%で、他の犬の38.12倍。 ブルドッグの病気の中で、もっとも倍率が高いものでした。
米国の獣医皮膚科専門医による解説(2019年)は、皮膚のひだの皮膚炎(間擦疹)を、皮膚と皮膚が接する場所で摩擦と微生物の過剰な増殖が起きた状態と定義し、涙・唾液といった排出物と皮脂がその場所にとどまることで微生物の増殖が続く と書いています。徴候は 赤み、浸出液、悪臭。顔と唇のひだの皮膚炎は イングリッシュ・ブルドッグとフレンチ・ブルドッグに多い とされ、管理の中心は「炎症と感染を解消し、過剰な湿り気をコントロールする」ことです。
つまり、ブルドッグの「涙やけ」で本当に問題になるのは、毛の着色ではなく、シワの内側の皮膚 です。赤茶色の毛は見た目の問題ですが、シワの赤み・ただれ・においは、皮膚炎の始まりです。鼻のシワと目の関係は、ペキニーズの記事でも書いています。
あわせて読みたい ペキニーズの涙やけ|鼻のシワと目のしくみ、緊急のサイン →シワの内側の皮膚がいちばん荒れるのは、湿気で乾かない夏です。夏の対策は、こちらにまとめています。
あわせて読みたい 夏の涙やけ|エアコンの風、紫外線、湿気とダニ、水遊び——6〜8月に涙と皮膚が荒れる4つの候補と、確かめる順番 →白い顔で目立ち、よだれと重なります
ここまでが「涙があふれる理由」です。ここからは「なぜ跡が目立つか」です。
着色に関わっているとされるのは、ポルフィリンという物質です。米国の動物病院グループの解説によれば、鉄を含む分子が分解される過程でつくられ、涙のほか唾液や尿からも排出されます。毛色に関係なく、涙に含まれています。 ブルドッグの毛色は、白、フォーン、ブリンドル、そしてこれらと白のパイボールドで、白い顔や白い口まわりの子では見え、ブリンドルの子では見えません。 起きていることは同じです。
そして、ブルドッグならではの事情があります。よだれ です。垂れた唇(フルー)から出るよだれは、口まわりと胸を濡らし続けます。唾液にもポルフィリンが含まれるので、白い口まわりの赤茶色は、涙やけとよだれやけが重なって見えていることがあります。
見分け方は、場所です。目頭から下へ向かう筋と鼻のシワ は涙、口の両側と下あご、胸 はよだれと飲み水です。対処は同じ(拭いて乾かす)ですが、口まわりは食事と飲水のたびに濡れるので、そのタイミングでの乾拭きが要ります。よだれやけについては、別の記事にまとめています。
あわせて読みたい よだれやけの落とし方|海外の獣医学的根拠にもとづく毎日のお手入れ →受診の目安チェックリスト
当日中に受診してください。
- 急に片目を細めている、まばたきが増えた、前足で目をこする(角膜の傷)
- 白目が充血している、角膜が白く濁った、瞳孔が開いたまま
- 目が飛び出したように見える、まぶたが閉じない
早めに受診してください。
- 目頭に赤い塊が出た(チェリーアイ。生後2〜6か月に多い)
- 目やにが粘り気を帯びてきた、黄色〜緑色の目やにが出る(4歳を過ぎたら、涙の量の検査を)
- まぶたの縁が内側に巻き込んで見える、下まぶたの目頭側がたるんで開いている
- 目頭の毛がいつも濡れている
- 鼻のシワや目の下のひだが赤い、ただれている、においがする、毛が抜けている
- 片目だけ涙が多い、片目だけ跡が濃い
- 拭き方を変えても、3週間以上まったく変わらない
涙やけとは別に、口を開けて呼吸する、いびきが大きい、少し動いただけで息が荒くなる、暑い日に舌が青紫になる といった様子があれば、それも受診の理由になります。最初の表のとおり、短頭種気道症候群はこの犬種で他の犬の19.20倍です。目と呼吸は、同じ顔のつくりから来ています。
自宅でできること
原因の診断がついている、あるいは受診したうえで経過を見ている——その前提での話として書きます。
確認できた自宅ケアは「拭く」「乾かす」「毛を短くする」の3つです。 着色を消すためではなく、濡れた状態が続くことで起きる皮膚トラブルを防ぐためのものと考えてください。米国の大手動物病院チェーン(VCA)の解説でも、目の周りを清潔に乾いた状態に保ち、たまった汚れを取り、目の周りの毛を短くすることが挙げられています。
ブルドッグでは、この3つに 「シワの内側まで乾かす」 を足してください。獣医皮膚科の解説が管理の中心に置いているのは、湿り気のコントロールです。
- 乾いたコットンで、涙そのものを先に取る。 濡れたもので先に拭くと、涙を薄めて広げます
- 湿らせて、毛の根元まで届く量で拭く。 目に液体が入らないよう、目頭から外側へ、こすらず押さえるように。目が出ているので、コットンの端が角膜に触れないよう、目から離れたところから始めてください
- 鼻のシワは、指で軽く広げて、内側まで拭く。 細くちぎったコットンを入れると届きます
- 仕上げに乾拭きして、シワの内側まで乾いた状態にする。 拭いたあとに乾かすところまでが1セットです。濡れたまま置くと、着色より先に皮膚が荒れます
- 口まわりは、食後と飲水後に乾拭きする。 よだれやけの対処です
そして、拭くたびに 目頭に赤い塊が出ていないか、目やにが粘っていないか、白目が赤くないか を見てください。この犬種では、涙やけのお手入れが、チェリーアイとドライアイの早期発見の機会になります。
濡れたまま放置するとどうなるかは、別の記事にまとめています。
あわせて読みたい 涙やけはお手入れ不足で悪化!原因をわかりやすく解説! →CLEAR WATER を使う場合の手順
当店の CLEAR WATER をお使いの場合は、次の手順です。
- 乾いたコットンで、目の下の涙を先に押さえて取る
- コットンを指先大にちぎり、ひたひたになるまでスプレーする(顔に直接スプレーしない)
- コットンを軽く絞りながら、目から離れたところから、目頭から外側へ優しく押さえるように拭く
- 鼻のシワは指で軽く広げ、細くちぎったコットンで内側まで拭く。白い口まわりも同じように
- 清潔な乾いたコットンで水気を取りきり、毛の根元とシワの内側まで乾いた状態にする
- 涙の量に応じて回数を調整する。食後・飲水後は口まわりを乾拭きする
着色を消すための工程ではありません。 涙が付着している時間を短くし、シワの内側を乾いた状態にするための工程です。すでに色のついた毛は元に戻りません。だからこそ、今ある色が薄くなるのを待つのではなく、これ以上濃くしないために毎日続けます。
ただし、繰り返しになりますが、チェリーアイ・ドライアイ・まぶた・角膜の傷は、拭いても変わりません。 お手入れと受診は、別の話として両方してください。
やってはいけないこと
チェリーアイを、押し戻したり放置したり、切除で済ませたりしないでください。 涙の40〜60%を作る腺です。切除すれば永久的なドライアイになることがあります。この犬種は、他の犬の24倍の確率で起き、生後2〜6か月に多い。あらかじめ知っておいてください。
粘る目やにを、涙やけの悪化だと決めないでください。 4〜7歳から、涙が減っているのかもしれません。涙の量を測る検査は数分で終わります。
急に片目を痛がる目を、拭かないでください。 短頭種の角膜潰瘍の危険は11倍以上です。当日中の受診です。
鼻のシワに、乾かさないまま保湿クリームや軟膏を塗り込まないでください。 湿った状態を閉じ込めることになります。シワの赤みやにおいが続くなら、市販品で対処せず、皮膚の感染として診てもらう段階です。
以前に処方された目薬を使い回さないでください。 VCAの解説は、角膜の傷にステロイドを含む目薬を使うと治りが止まり、重い合併症を起こすことがあると警告しています。ドライアイの疑いがあるときに、合わない点眼を続けると角膜を傷めます。人間用の目薬も同じです。
過酸化水素(オキシドール)を含む製品を目の周りに使わないでください。 VCAの解説が、目に入れば重い損傷を起こすと明確に警告しています。白い顔で白く戻したくなっても、目と引き換えにしていいものではありません。
目のすぐそばを、自分でハサミやバリカンで触らないでください。 目が出ていて、角膜との距離が近い犬種です。
「白くなる」と謳うサプリには注意が必要です。 2014年8月、米国の食品医薬品局(FDA)は涙やけ製品を販売する3社に警告書を発出しました。一部の製品にタイロシン酒石酸塩という抗菌性物質が含まれていたためです。FDAは、タイロシンは犬・猫のいかなる用途にも承認されていないと明言しています。より大きな問題は、原因を診断しないまま着色だけを消してしまうと、チェリーアイやドライアイという見逃してはいけないサインを覆い隠してしまう ことです。
よくある質問
Q. ブルドッグは涙やけになりやすい犬種ですか?
涙やけの前に、目の病気そのものが多い犬種 です。英国の一次診療の記録でブルドッグ2,662頭を調べた研究では、75.8%に何らかの病気があり、チェリーアイは他の犬の26.79倍、ドライアイは12.24倍、まぶたの巻き込みは11.61倍、皮膚のシワの皮膚炎は38.12倍でした。ECVOの手引きにも、この犬種の目の病気として、まぶたの巻き込みとたるみ、睫毛重生、異所性睫毛、チェリーアイ、ドライアイが載っています。涙やけは、これらの結果として現れることが多い犬種です。
Q. 目頭に赤い塊が出ました。
チェリーアイ(第三眼瞼腺の脱出)です。手引きでは、ブルドッグでは 生後2〜6か月 に出るのが普通とされ、英国の記録では、この犬種は他の犬の24倍の確率で起き、最初の診断の年齢の中央値は0.63歳でした。この腺は涙の40〜60%を作っているので、切除すると永久的なドライアイになることがあります。押し戻したり放置したりせず、元の位置に戻す手術について獣医師に相談してください。
Q. 目やにが粘るようになりました。涙が増えたのですか?
逆かもしれません。手引きでは、ブルドッグのドライアイ(乾性角結膜炎)は 4〜7歳で発症し、両目に、進行性 に起こるとされています。英国の記録では、この犬種のドライアイは他の犬の37.95倍でした。涙の水の部分が減ると、目を守るために粘り気のある目やにが増え、涙やけと紛らわしくなります。涙の量を測る検査は数分で終わります。放置すると角膜を傷めますが、点眼で管理できる病気です。
Q. まぶたが内側に巻き込んでいるように見えます。
手引きには、ブルドッグの眼瞼内反として「主に下まぶたの外側、ときに上まぶたの外側」、2歳未満の発症と載っています。同時に、「下まぶたの内側のたるみ(マクロブレファロンをともなう眼瞼外反)」も載っています。外側は巻き込み、内側はたるんで開く ——この組み合わせが、涙をこぼし、角膜を乾かし、毛を角膜に当てます。英国の記録では、ブルドッグの眼瞼内反は年間4.65%で、犬全体の0.33%の約14倍でした。
Q. 鼻のシワが赤くて臭います。
涙と皮脂がシワにたまり、空気が通らない場所で細菌や酵母が増えている状態です。英国の記録では、ブルドッグの皮膚のシワの皮膚炎は8.2%で、他の犬の38.12倍でした。米国の獣医皮膚科専門医の解説も、顔と唇のひだの皮膚炎はイングリッシュ・ブルドッグとフレンチ・ブルドッグに多いとし、管理の中心を 「湿り気のコントロール」 としています。赤み・ただれ・においが続くなら、市販品ではなく受診です。
Q. フードを変えれば涙やけは減りますか?
通常のドッグフードが涙やけを引き起こすことを示した対照試験は、確認できませんでした。ブルドッグの場合、チェリーアイ、まぶた、ドライアイ、シワという、診察で確認できる原因がそろっています。フードの見直しは、獣医師が原因を絞り込んだうえでの選択肢です。
まとめ
- 英国のブルドッグ2,662頭の記録では 75.8%に病気。チェリーアイ 26.79倍、ドライアイ 12.24倍、まぶたの巻き込み 11.61倍、シワの皮膚炎 38.12倍。涙やけは、この手前の病気の結果
- チェリーアイは生後2〜6か月、他の犬の24倍。涙の40〜60%を作る腺。切除しない、放置しない
- ドライアイは4〜7歳から、両目に進行性。粘る目やには「涙が減った」サイン。涙の量の検査は数分
- 下まぶたは外側で巻き込み、内側でたるむ。毛が当たり、涙がこぼれ、角膜が乾く。短頭種の角膜潰瘍は11倍以上。急に片目を痛がるなら当日中
- 涙の通り道は 84.3°の坂道。でも詰まってはいない
- 鼻のシワ は着色より先に皮膚炎になる場所。内側まで拭いて、内側まで乾かす。赤み・においが続くなら受診
- 白い顔では 涙やけとよだれやけが重なる。食後・飲水後の乾拭きも
涙やけは見た目の問題として語られがちですが、ブルドッグの場合、その手前に、涙を作る腺、まぶた、角膜、皮膚の問題が並んでいます。「ブルドッグの目」で検索したときに知っておいてほしいのは、着色の消し方より、この順番です。
参考文献
- O’Neill DG, Skipper A, Packer RMA, Lacey C, Brodbelt DC, Church DB, Pegram C. English Bulldogs in the UK: a VetCompass study of their disorder predispositions and protections. Canine Med Genet. 2022;9:5. doi:10.1186/s40575-022-00118-5(英国の一次診療の記録からブルドッグ2,662頭と他の犬22,039頭を比べた研究)
- ECVO Manual: Breeds 2021 – Bulldog|European College of Veterinary Ophthalmologists(ヨーロッパの獣医眼科専門医団体による犬種別の遺伝性・好発眼疾患の手引き)
- O’Neill DG, Yin Y, Tetas Pont R, et al. Breed and conformational predispositions for prolapsed nictitating membrane gland (PNMG) in dogs in the UK: A VetCompass study. PLoS ONE. 2022;17(1):e0260538. doi:10.1371/journal.pone.0260538(犬905,543頭におけるチェリーアイの発生と犬種別の危険)
- O’Neill DG, et al. Keratoconjunctivitis sicca in dogs under primary veterinary care in the UK: an epidemiological study. J Small Anim Pract. 2021. doi:10.1111/jsap.13382(犬363,898頭におけるドライアイの発生と犬種別の危険)
- O’Neill DG, Mustikka MP, Brodbelt DC, Church DB, Vaattovaara V. Conformational eyelid disorders in dogs under primary veterinary care in the UK – Epidemiology and clinical management. PLoS ONE. 2025;20(6):e0326526. doi:10.1371/journal.pone.0326526(犬2,250,417頭における眼瞼内反・外反の発生と犬種別の割合)
- O’Neill DG, Lee MM, Brodbelt DC, Church DB, Sanchez RF. Corneal ulcerative disease in dogs under primary veterinary care in England: epidemiology and clinical management. Canine Genet Epidemiol. 2017;4:5. doi:10.1186/s40575-017-0045-5(短頭種の角膜潰瘍の危険)
- Sahr S, Dietrich A, Oechtering G. Evaluating malformations of the lacrimal drainage system in brachycephalic dog breeds: A comparative computed tomography analysis. PLoS ONE. 2021;16(9):e0257020. doi:10.1371/journal.pone.0257020(短頭種51頭の涙の排出路をCTで解析した研究)
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- Cherry Eye – Should It Stay or Should It Go?|ACVO Public(米国獣医眼科専門医協会の飼い主向け解説。涙の産生割合と治療)
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- Corneal Ulcers in Dogs|VCA Animal Hospitals(角膜潰瘍の徴候・原因・ステロイドについての警告)
- Eye Discharge or Epiphora in Dogs|VCA Animal Hospitals(好発犬種と自宅ケア、過酸化水素についての警告)
- Tear Staining in Dogs|MedVet(米国の動物病院グループ。ポルフィリンについての解説)
- FDA warns makers of unapproved tear stain products|AVMA / JAVMA News, 2014
免責事項
本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、診断ではありません。愛犬の症状については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。記載内容は執筆時点で確認できた情報にもとづいており、個々の犬に当てはまるとは限りません。目の症状は進行が早いことがあります。判断に迷う場合は、記事を読み進めるより先に動物病院へご連絡ください。
記事執筆者・監修者
- 西尾 亮佑
-
【ペット業界15年以上】横浜ペットコミュニティ専門学院にてトリミング・訓練を学び、大手ペットショップ・ペットメーカーに勤務。数多くのペットショップ・トリミングサロン・動物病院を視察してきました。
その中でペット業界の矛盾の多さや利益優先の姿勢に疑問を持ち、愛犬・愛猫の健康面を最優先に考える想いを貫くため2020年7月15日にDog&Cat CLEARを設立。愛猫21匹と愛犬2匹と暮らしながら『愛犬・愛猫の健康は飼い主が守る』を発信しています。