ペキニーズの涙やけ|鼻のシワと目のしくみ、緊急のサイン
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海外の獣医学的に涙やけをどう捉えるのかをまとめて参照した内容となります!
これはこういうのはあった。これはどうだろう?という僕の経験則の部分はまた随時更新いたします!
- こんな人にオススメな内容
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- 目の下や鼻のシワが茶色く変色している
- 鼻のシワの中がいつも湿っている、においがする
- 目が大きく前に出ていて、白目が見えることがある
- ペキニーズを飼っている
- ペキニーズは、短頭種のなかでも極端です
- 鼻のシワの毛が、角膜に当たっています
- 数字で見ると、どのくらいのリスクなのか
- 涙そのものも、きれいではありません
- いちばん急ぐのは、涙やけではありません
- もし飛び出してしまったら
- 予防としてできること
- 受診の目安チェックリスト
- 自宅でできること
- CLEAR WATER を使う場合の手順
- やってはいけないこと
- よくある質問
- まとめ
- 参考文献
- 免責事項
ペキニーズの目の下と鼻のシワが、いつも湿っていて茶色い。拭いても追いつかない。目も大きく前に出ていて、たまに白目が見えている——そう検索してこのページにたどり着いた方に向けて書いています。
ペキニーズの涙やけは、短頭種のなかでも一段深いところに原因があります。 そしてこの犬種には、涙やけよりずっと急を要する話があります。
海外の獣医学的な情報源を確認したうえで、順に整理します。本文で触れている資料の出典は、すべて記事末尾の参考文献に挙げています。
先に結論だけお伝えします。
- 英国の動物福祉団体の資料には、おそらくすべてのペキニーズが、程度の差はあれこの目の状態にある と書かれています
- 鼻のシワの毛が目に当たる状態は、極端な短頭種にしか起きません。 ペキニーズはその代表です
- 700頭を調べた研究では、鼻のシワがある犬は角膜に傷ができる確率が約5倍、短頭種全体では約20倍でした
- 白目が見えている犬は約3倍、まぶたの開きが大きい犬はさらに高い
- ペキニーズは、短頭種のなかでもっとも眼球脱出を起こしやすい とされています。これは分単位の緊急事態です
ペキニーズは、短頭種のなかでも極端です

まず、シーズーやパグの話をそのまま持ち込まないでください。同じ短頭種でも、ペキニーズは程度が違います。
英国の動物福祉団体がまとめた犬種別の資料には、ペキニーズについて 「おそらくすべてのペキニーズが、程度の差はあれこの状態にある」 と書かれています。ここでいう「この状態」とは、短頭種特有の目のトラブルをまとめた呼び名のことです。
一部の個体の話ではなく、犬種の形そのものに組み込まれている という書かれ方です。
鼻の骨が極端に短く、目が収まる骨のくぼみ(眼窩)が浅い。そのぶん目が前に出ています。まぶたの開きも大きく、閉じきりません。この基本構造はシーズーと共通です。
あわせて読みたい シーズーの涙やけ対策|短頭種だから起きる目のしくみ →ペキニーズでは、そこにもうひとつ加わります。
鼻のシワの毛が、角膜に当たっています

ペキニーズの涙やけを考えるとき、いちばん重要なのがここです。
同じ資料には、鼻のシワから生えた毛が目に当たる状態は、より極端な短頭種にしか起きない と書かれています。ペキニーズはその代表格として名前が挙がっています。1983年の報告では、こうした毛の当たりはペキニーズで他の犬種より高い頻度で見られるとされています。
普通の犬では、鼻と目のあいだに距離があります。ペキニーズにはその距離がほとんどありません。鼻の上に盛り上がったシワが、そのまま角膜のすぐ手前まで来ています。シワから生えた毛が、まばたきのたびに黒目をなでている 状態です。
その結果、何が起きるか。
- 毛が当たる刺激で、涙が増える
- 増えた涙は、まぶたの構造上、涙点から抜けきらない
- 顔にこぼれる
- こぼれた涙は、目の下ではなく 鼻のシワの内側に溜まる
- シワの内側は空気が通らないので、乾かない
ペキニーズの涙やけが「目の下」だけでなく シワに沿って広がる のは、このためです。そして湿ったまま閉じているシワの中は、細菌や酵母が増えやすい環境になります。においが気になるとき、原因は着色ではなく、この湿り気のほうです。
鼻のシワに涙がたまって皮膚炎になる話は、フレンチブルドッグでも同じです。英国の一次診療の記録では、フレンチブルドッグは皮膚のシワの皮膚炎になる確率が他の犬種の11.18倍でした。
あわせて読みたい フレンチブルドッグの涙やけ|涙が多いのに、目は乾いています →イングリッシュ・ブルドッグでは、同じ記録で皮膚のシワの皮膚炎が他の犬の38.12倍と、この犬種の病気の中でもっとも高い倍率でした。
あわせて読みたい ブルドッグの涙やけと目の病気|チェリーアイ27倍・ドライアイ12倍、英国の記録が示すこと →数字で見ると、どのくらいのリスクなのか

700頭の犬を調べ、顔の形と角膜の傷の関係を解析した研究(2015年)があります。そこで報告されたのが次の数字です。
- 顔の短い犬(頭蓋顔面比0.5未満)は、そうでない犬の 約20倍
- 鼻のシワがある犬は、ない犬の約5倍
- まぶたの開きが10%大きいと、リスクは 3倍以上
- 白目が見えている犬は、約3倍
ペキニーズは、この4つの条件を すべて同時に 満たしやすい犬種です。
犬種別の内訳も出ています。パグが32頭中12頭(37.5%)、シーズーが13頭中4頭(31%)、ペキニーズが3頭中2頭でした。
ただし、この研究に参加したペキニーズは3頭だけです。 割合としての「66.7%」に意味を持たせるには少なすぎます。ペキニーズが高リスクであること自体は、顔の形の条件から説明がつきますが、数字そのものを鵜呑みにしないでください。
この研究で32頭中12頭だったパグは、別の研究で角膜潰瘍の確率が雑種犬の19.05倍、角膜の色素沈着が91.9%と報告されています。
あわせて読みたい パグの涙やけ|涙の跡より先に、角膜の色を見てください →涙そのものも、きれいではありません

もうひとつ、ペキニーズについて報告されていることがあります。
1989年の報告によれば、調べたペキニーズの多くで、涙が粘り気のある粘液や細胞、細かい粒子で汚れていた とされています。
涙が汚れているということは、顔にこぼれてくるものも汚れているということです。単なる水が流れているのではありません。拭いたあとに乾かす工程が、他の犬種以上に効いてくる 理由がここにあります。
いちばん急ぐのは、涙やけではありません

ここからは、この記事でもっともお伝えしたい内容です。
ペキニーズは、短頭種のなかでもっとも眼球脱出(目が眼窩から前に飛び出してしまう状態)を起こしやすい犬種 とされています。1993年の報告に、そう記載されています。眼球脱出の症例全体を見ても、その半数が短頭種だったという報告があります。
目が深く収まっていないため、普通の犬なら何ともない程度の力でも起こりえます。
- 首輪を強く引いたとき
- 頭や顔まわりを強く押さえられたとき
- ほかの犬とぶつかったとき
- 段差から落ちたとき
そして、これは 分単位の緊急事態 です。目の表面が乾く時間が長いほど、視力が戻らなくなります。
もし飛び出してしまったら
- 自分で押し戻そうとしない
- 清潔な布やガーゼを、生理食塩水(なければ水)で湿らせる
- 目の表面を覆って、乾かさない
- すぐ動物病院に連絡し、そのまま向かう
- 犬が前足でこすらないよう、そっと押さえる
予防としてできること
- 首輪ではなくハーネスを使う
- 顔まわりを強く押さえない、押さえさせない
- 段差や階段からの飛び降りを減らす
- 多頭飼いや大型犬との接触時に目を離さない
散歩道具を変えるだけでも、避けられる負荷は減らせます。
受診の目安チェックリスト

ひとつでも当てはまれば、動物病院にご相談ください。痛がっているかどうかで判断しないでください。 短頭種は角膜の感覚が鈍く、傷ができても痛がらないことが知られています。
- 白目が充血している
- 角膜が白っぽく濁っている、もやがかかって見える
- 黒目に黒ずんだ部分が広がってきた
- もともと見えていた白目の面積が広がってきた
- 目を細めている・開けにくそうにしている
- 前足で目をこする、床や家具に顔をこすりつける
- 片目だけに症状が出ている
- 黄色〜緑色の膿のような目やにが出る
- 鼻のシワの中が赤い、ただれている、においが強い
- 物にぶつかる、段差を怖がるなど見えにくそうな様子がある
自宅でできること

確認できた自宅ケアは「拭く」「乾かす」「毛を短くする」の3つです。 着色を消すためではなく、濡れた状態が続くことで起きる皮膚トラブルを防ぐためのものと考えてください。
米国の大手動物病院チェーンの飼い主向け解説でも、この3点が基本として挙げられています。
- 目の周りを清潔に保つ(拭く)
- 拭いたあとは乾いた状態に保つ(乾かす)
- 目の周りの被毛を短くカットする
ペキニーズでは、鼻のシワが主役 になります。
シワの内側は、外から見えているより深く、奥まで湿っています。表面を撫でるだけでは水分は取れません。シワを軽く広げて、内側の面に触れさせるように 拭いてください。そして、拭いたあとに乾いた面で水分を取るところまでを1セットにします。
拭き取りは、乾いた被毛をこするのではなく、湿らせて汚れをふやかしてから、力を入れずに押さえるように行います。目に液体が入らないよう、目頭から外側に向けて動かしてください。
シワの毛を自分でハサミで切るのは、絶対にやめてください。 ペキニーズはシワと角膜の距離がほとんどありません。刃先が触れれば一瞬で傷がつき、しかも痛がらないので気づきません。目のまわりとシワの整えは、トリマーか動物病院にお願いしてください。
CLEAR WATER を使う場合の手順
当店の CLEAR WATER をお使いの場合は、次の手順です。
- コットンを指先大にちぎる
- ひたひたになるまでスプレーする
- コットンを軽く絞りながら、目の周りを優しくマッサージするように拭く
- 鼻のシワは、軽く広げて内側の面まで拭く
- 清潔なコットンで水気を拭き取り、乾いた状態にする
- 涙の量に応じて回数を調整する
着色を消すための工程ではありません。 涙が付着している時間を短くするための工程です。すでに色のついた毛は元に戻りません。だからこそ、今ある色が薄くなるのを待つのではなく、これ以上濃くしないために毎日続けます。 拭かなかった日のぶんだけ、新しい着色が積み重なります。
やってはいけないこと
鼻のシワや目のそばの毛を、自分でハサミで切らないでください。 ペキニーズでこれがいちばん危険です。
過酸化水素(オキシドール)を含む製品を目の周りに使わないでください。 米国の大手動物病院チェーンの解説が、明確に警告しています。
点眼薬は、以前に処方されたものであっても獣医師の指示なく使わないでください。 ペキニーズでは角膜に傷がある可能性が高く、種類によっては傷を悪化させます。人間用の目薬も同様です。
「白くなる」と謳うサプリには注意が必要です。 2014年8月、米国の食品医薬品局(FDA)は涙やけ製品を販売する3社に警告書を発出しました。一部の製品にタイロシン酒石酸塩という抗菌性物質が含まれていたためです。FDAは、タイロシンは犬・猫のいかなる用途にも承認されていないと明言しています。2017年5月にも、別の1社に同じ理由で警告書が出されています。
より大きな問題は、原因を診断しないまま着色だけを消してしまうと、角膜の異常という見逃してはいけないサインを覆い隠してしまう ことです。
よくある質問
Q. ペキニーズの涙やけは、鼻のシワを拭けば減りますか?
シワの中を乾いた状態に保つことは、皮膚のトラブルを防ぐうえで大きな意味があります。ただし涙がこぼれる量そのものは、シワの毛が目に当たっていることや、まぶたの構造が関係しています。拭いても涙の量が変わらないなら、目のまわりの構造を診てもらう段階です。
Q. 鼻のシワの毛を自分で切ってもいいですか?
やめてください。ペキニーズは目が前に出ていて、シワと角膜の距離がほとんどありません。刃先が角膜に触れれば一瞬で傷がつきます。しかも短頭種は角膜の感覚が鈍く、痛がりません。
Q. 白目が見えているのは普通ですか?
ペキニーズでは珍しくありませんが、無害という意味ではありません。前述の研究では、白目が見えている犬は角膜に傷ができる確率が約3倍でした。もともと見えている面積が広がってきた場合や、片目だけ目立つ場合は受診してください。
Q. 散歩は首輪とハーネス、どちらがいいですか?
ハーネスをおすすめします。ペキニーズは短頭種のなかでもっとも眼球脱出を起こしやすいとされる犬種です。首輪を強く引くと首まわりの圧が上がるため、避けられる負荷は避けたほうが安全です。
Q. 目が飛び出してしまったら、どうすればいいですか?
分単位の緊急事態です。自分で押し戻そうとせず、清潔な布を生理食塩水や水で湿らせて目の表面が乾かないよう覆い、すぐ動物病院に連絡してください。乾燥する時間が短いほど、視力が残る可能性が高くなります。
Q. フードを変えれば涙やけは減りますか?
通常のドッグフードが涙やけを引き起こすことを示した対照試験は、確認できませんでした。ペキニーズの場合、顔の構造という説明のつく原因があります。フードの見直しは、獣医師が原因を絞り込んだうえでの選択肢です。
まとめ
- 英国の動物福祉団体の資料には、おそらくすべてのペキニーズが、程度の差はあれこの目の状態にある と書かれています
- 鼻のシワの毛が目に当たる状態は、極端な短頭種にしか起きません。 ペキニーズの涙やけは、ここが中心です
- こぼれた涙は目の下で止まらず、乾かないシワの内側に溜まります。 においの原因は着色ではなく湿り気です
- 700頭の研究では、鼻のシワがある犬は角膜の傷が約5倍、短頭種は約20倍、白目が見えていると約3倍
- ペキニーズは 短頭種のなかでもっとも眼球脱出を起こしやすい とされています。首輪よりハーネスを
- 目が飛び出したら 押し戻さず、濡らして覆って、すぐ受診。 分単位です
- 自宅でできるのは「拭く・乾かす・毛を短くする」。シワの内側まで乾かすこと が要です
涙やけは見た目の問題として語られがちですが、ペキニーズの場合、その下で角膜が消耗していることがあります。そして、いちばん急ぐのは涙やけではありません。
参考文献
- Packer RMA, Hendricks A, Burn CC. Impact of Facial Conformation on Canine Health: Corneal Ulceration. PLOS ONE. 2015;10(5):e0123827. doi:10.1371/journal.pone.0123827(700頭を対象に顔の形と角膜潰瘍の関係を解析)
- Pekingese – Brachycephalic Ocular Syndrome|UFAW(英国の動物福祉団体による犬種別資料)
- Stockman(1983)/Carrington SD ら(1989)/Mould J(1993)/Gelatt KN(2002)— いずれも上記 UFAW 資料に引用されている報告
- Understanding and Addressing Brachycephalic Ocular Syndrome|Today’s Veterinary Practice(米国の獣医眼科専門医による短頭種の目の解説)
- Tear Staining in Dogs|MedVet(米国の動物病院グループ)
- Eye Discharge or Epiphora in Dogs|VCA Animal Hospitals(米国の大手動物病院チェーン)
- FDA warns makers of unapproved tear stain products|AVMA / JAVMA News, 2014
- FDA Warning Letter: Merit Pet Products, LLC(2017年5月12日)
免責事項
本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、診断ではありません。愛犬の症状については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。記載内容は執筆時点で確認できた情報にもとづいており、個々の犬に当てはまるとは限りません。眼球脱出が疑われる場合は、本記事の内容にかかわらず直ちに動物病院にご連絡ください。
記事執筆者・監修者
- 西尾 亮佑
-
【ペット業界15年以上】横浜ペットコミュニティ専門学院にてトリミング・訓練を学び、大手ペットショップ・ペットメーカーに勤務。数多くのペットショップ・トリミングサロン・動物病院を視察してきました。
その中でペット業界の矛盾の多さや利益優先の姿勢に疑問を持ち、愛犬・愛猫の健康面を最優先に考える想いを貫くため2020年7月15日にDog&Cat CLEARを設立。愛猫21匹と愛犬2匹と暮らしながら『愛犬・愛猫の健康は飼い主が守る』を発信しています。