ダックスフンドの涙やけ|まぶたより先に角膜を疑う犬種です
- この記事について
現時点では個人的に感じた感想や意見はまだ記載しておりません!
海外の獣医学的に涙やけをどう捉えるのかをまとめて参照した内容となります!
これはこういうのはあった。これはどうだろう?という僕の経験則の部分はまた随時更新いたします!
- こんな人にオススメな内容
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- ダックスなのに涙やけが出ていて理由が分からない
- 目の白い濁りや、黒っぽい色素が気になる
- ねばつく目やにが続いている
- 拭いても涙やけの濃さが変わらない
- ダックスは、涙やけになりにくいはずの犬種です
- 獣医眼科の手引きは、ダックスを「毛質と体格」で分けています
- まぶたの内反は「外側」です
- パンヌスは、治る病気ではありません
- 涙が多いのに、乾いていることがあります
- 受診の目安チェックリスト
- 自宅でできること
- CLEAR WATER を使う場合の手順
- やってはいけないこと
- よくある質問
- まとめ
- 参考文献
- 免責事項
ダックスの目の下が、いつも湿っている。涙やけを調べると鼻の短い犬や、目の周りの毛が長い犬の話ばかり出てくる。うちの子はどちらでもない——そう検索してこのページにたどり着いた方に向けて書いています。
その違和感には、はっきりした意味があります。ダックスは、涙やけになりにくいはずの犬種です。
マズルは長く、涙の通り道が押しつぶされていません。目の周りの毛が涙の出口にかぶさる犬種でもありません。犬種の形からは、なりやすい理由が見当たらないのです。
それでも涙やけが出ているなら、理由は形ではなく、別のところにあります。 そしてダックスの場合、その「別のところ」の筆頭は角膜です。
海外の獣医学的な情報源を確認したうえで、順に整理します。本文で触れている資料の出典は、すべて記事末尾の参考文献に挙げています。
先に結論だけお伝えします。
- ダックスは、犬種の形では涙やけを説明できません。 だから出ているなら理由を探す価値があります
- 獣医眼科の犬種別手引きは、ダックスの目の病気を 毛質と体格ごとに書き分けています。 同じダックスでも挙がっている病気が違います
- 挙がっているものの多くが 角膜そのものの病気 です。まぶたや涙の出口ではありません
- パンヌス(慢性表層性角膜炎)は治りません。 治療は進行を止めるためのもので、生涯続きます
- ステロイド点眼の使い回しは、この犬種でとくに危険です。 ステロイドで治すものと、ステロイドで悪化するものが両方あります
ダックスは、涙やけになりにくいはずの犬種です

まず、これまでの犬種と何が違うかを整理します。
| 犬種 | 涙やけの中心になる理由 |
|---|---|
| シーズー・ペキニーズ | マズルが短く、涙の通り道と目の表面に無理がかかる |
| ビションフリーゼ | 目の周りの毛が、涙の出口を物理的にふさぐ |
| ポメラニアン | まつ毛・まぶた・涙点といった、その子に固有の異常 |
| ダックスフンド | 犬種の形からは説明がつかない |
ダックスはマズルがしっかりあり、目の周りの被毛が目にかぶさる犬種でもありません。構造上の理由が見当たらない のです。
これは good news でもあります。形が原因なら変えようがありませんが、形が原因でないなら、原因のほうを探して手を打てる可能性がある ということです。
涙があふれるしくみそのものについては、別の記事にまとめています。
あわせて読みたい 犬の涙やけの原因は?海外の獣医学的な根拠と受診の目安を解説 →同じように、犬種の形で涙やけを説明できない犬種に、コーギーがあります。手引きに載っている病気は目の内側のものが中心で、出ているなら、その子の目に理由があります。
あわせて読みたい コーギーの涙やけ|手引きに「涙の病気」がほとんど載っていない犬種で、出ているなら理由があります →獣医眼科の手引きは、ダックスを「毛質と体格」で分けています

ここがダックスの特殊なところです。
ヨーロッパの獣医眼科専門医の団体が出している犬種別の手引きを見ると、ダックスの項目だけ、病気ごとに毛質と体格が書き分けられています。
| 挙げられているもの | どの種類か |
|---|---|
| 眼瞼内反(下まぶたの外側) | ミニチュアのロング/スタンダードのスムースとロング |
| 慢性表層性角膜炎(パンヌス) | ワイヤー/ロング |
| 点状角膜炎 | ロング |
| デルモイド(角膜と強膜にできる異所性の皮膚) | スタンダードとミニチュアのワイヤー |
| 角膜ジストロフィー | すべての種類 |
| 睫毛重生・乾性角結膜炎(ドライアイ) | 報告あり |
「ダックスだから」ではなく「ミニチュアのロングだから」で見る表 です。うちの子がどの種類かで、確認すべき行が変わります。
そして表を眺めて気づくことがあります。角膜の病気が、とにかく多い。 6項目のうち4つが角膜です。
まぶたの内反は「外側」です

小さい話に見えて、実は見る場所を左右します。
同じ下まぶたの内反でも、チワワは目頭側(内側)、ダックスは目尻側(外側) と、手引きに書かれている場所が違います。
目頭側の内反なら、涙の出口である涙点が直接ふさがります。外側なら、涙点はふさぎません。 代わりに、巻き込んだまぶたの毛が角膜のふちを擦り続けます。
つまりダックスの場合、まぶたの問題も 「涙が出ていけない」ではなく「角膜が刺激され続けて涙が増える」 という経路になります。ここでも行き着く先は角膜です。
目頭側で何が起きるのかは、ポメラニアンの記事にまとめています。左右差がある場合の考え方も書いています。
あわせて読みたい ポメラニアンの涙やけ|片目だけなら原因が違います →パンヌスは、治る病気ではありません

ここは正直に、重く書きます。
慢性表層性角膜炎(パンヌス) は、角膜に起きる免疫の病気です。手引きではダックスのワイヤーヘアーとロングヘアーで報告されています。
米国の大手動物病院チェーンの解説には、こう書かれています。
「治療によってこの状態が治ることはなく、進行を止め、一部の変化を戻す可能性があるにとどまる」 「パンヌスの治療は生涯にわたる」
進み方はこうです。目の外側にピンク色の盛り上がりが現れ、やがて平らになって色素が沈着し、瘢痕が角膜に広がっていきます。第三眼瞼(瞬膜)が厚く腫れることが多く、粘液性の目やに をともないます。放置すれば失明することもあります。
紫外線を多く浴びる環境や、標高の高い場所で悪化しうる とも書かれています。散歩の時間帯を変えるだけでも意味がある、ということでもあります。
夏の強い日差しの時期に、散歩の時間帯や紫外線とどう付き合うかは、夏の記事に書いています。
あわせて読みたい 夏の涙やけ|エアコンの風、紫外線、湿気とダニ、水遊び——6〜8月に涙と皮膚が荒れる4つの候補と、確かめる順番 →主に報告されているのはジャーマン・シェパードとその系統ですが、手引きはダックスの一部の毛質でも挙げています。 「シェパードの病気だからうちは関係ない」とは言い切れません。
目やにがねばつく、目の外側に色のついた盛り上がりがある、白目と黒目の境目が濁ってきた。こうしたサインが涙やけと一緒にあるなら、拭くケアの話ではありません。
涙が多いのに、乾いていることがあります

手引きには 乾性角結膜炎(ドライアイ) も報告として挙がっています。
質の良い涙が足りないと、目の表面は乾きます。乾けば刺激になり、刺激に対して 水っぽい涙が反射的に増えます。 結果、見た目は「涙が多い」のに中身は足りていない、という状態になります。
拭くケアだけを続けても変わらないのは当然です。足りていないものを拭き取っているのですから。
シルマー涙液試験 という検査で分かります。細い紙をまぶたに1分挟むだけで、特別な機械は要りません。拭いても濃さが変わらないなら、一度受ける価値があります。
受診の目安チェックリスト
ひとつでも当てはまれば、動物病院にご相談ください。
- 目やにがねばつく、糸を引く
- 目の外側に、ピンクや黒っぽい盛り上がりがある
- 白目と黒目の境目が濁ってきた、白っぽい点がある
- 第三眼瞼(目頭にある膜)が厚く見える、赤い
- 目を細めている、まぶしがる
- 前足で目をこする、床や家具に顔をこすりつける
- 急に涙の量が増えた
- 片目だけ涙やけが濃い、左右差がはっきりある
- まぶたのふち(とくに目尻側)が内側に巻いているように見える
- 目の下の皮膚が赤い、ただれている、においが強い
上の2つは、涙やけではなく角膜の病気を疑うサインです。 拭く前に診てもらってください。
自宅でできること

診断がついている、あるいは受診したうえで経過を見ている——その前提での話として書きます。
着色を消すためではなく、濡れた状態が続くことで起きる皮膚トラブルを防ぐためのケア と考えてください。すでに色のついた毛は元に戻りません。変わるのは、これから生えてくる毛です。
米国の大手動物病院チェーンの飼い主向け解説でも、この3点が基本として挙げられています。
- 目の周りを清潔に保つ(拭く)
- 拭いたあとは乾いた状態に保つ(乾かす)
- 目の周りの被毛を短くカットする
ダックスで意識したいのは 毛質による違い です。ロングヘアーの子は目の周りの飾り毛が涙を吸い上げて留めます。スムースの子は毛が短いぶん、濡れた皮膚がそのまま外気にさらされます。 どちらも「乾かす」が効きますが、理由が違います。
拭き取りは、乾いた被毛をこするのではなく、湿らせて汚れをふやかしてから、力を入れずに押さえるように 行います。目に液体が入らないよう、目頭から外側に向けて動かしてください。
そして、拭いたあとに乾かすところまでが1セット です。
CLEAR WATER を使う場合の手順
当店の CLEAR WATER をお使いの場合は、次の手順です。
- コットンを指先大にちぎる
- ひたひたになるまでスプレーする
- コットンを軽く絞りながら、目の周りを優しくマッサージするように拭く
- 乾いたコットンで乾拭きする
- 涙の量に応じて回数を調整する
拭かなかった日のぶんだけ、新しい着色が積み重なります。 今ある色が薄くなるのを待つのではなく、これ以上濃くしないために毎日続けるものです。
ただしダックスの場合、拭いても濃さが変わらないなら、お手入れの量ではなく前提を疑ってください。 犬種の形が原因ではない以上、拭く回数を増やしても届かない原因が残っている可能性があります。
あわせて読みたい 涙やけ改善できない人の圧倒的口癖!どのケア商品使ってもダメ →やってはいけないこと
点眼薬の使い回しは、この犬種でとくに危険です。
ここだけは強く書きます。ダックスで挙がっている角膜の病気には、ステロイド点眼で治療するもの(パンヌス)と、ステロイドを使うと悪化するもの(角膜の傷)の両方があります。 そして見た目では区別がつきません。
以前に処方された目薬が残っていても、別の子に出された目薬があっても、獣医師の指示なく使わないでください。 人間用の目薬も同様です。診断より先に薬を使うと、治るはずのものを悪くします。
目のすぐそばの毛を、自分でハサミで切らないでください。 目のまわりはトリマーか動物病院にお願いしてください。
内側を向いたまつ毛を、自分で抜かないでください。 抜いても生え直しますし、まぶたを傷つけます。
「白くなる」と謳うサプリには注意が必要です。 2014年8月、米国の食品医薬品局(FDA)は涙やけ製品を販売する3社に警告書を発出しました。一部の製品にタイロシン酒石酸塩という抗菌性物質が含まれていたためです。FDAは、タイロシンは犬・猫のいかなる用途にも承認されていないと明言しています。2017年5月にも、別の1社に同じ理由で警告書が出されています。
より大きな問題は、原因を診断しないまま着色だけを消してしまうと、見つければ対処できる原因を覆い隠してしまう ことです。ダックスではとくにもったいない話です。
よくある質問
Q. ダックスは涙やけになりやすい犬種ですか?
犬種の形からは、なりやすい理由が見当たりません。だからこそ、出ているなら「犬種だから」で片づけず、別の理由を探す価値があります。
Q. 毛質によって、目の病気の起こりやすさは変わりますか?
変わります。獣医眼科の犬種別手引きでは、ダックスの目の病気が毛質と体格ごとに書き分けられています。同じダックスでも挙がっている病気が違います。
Q. パンヌスとは何ですか?
角膜に起きる免疫の病気です。治ることはなく、治療は進行を止めるためのもので、生涯続きます。 紫外線を多く浴びる環境や標高の高い場所で悪化しうるとされています。
Q. 他の犬に処方された目薬を使ってもいいですか?
絶対にやめてください。ダックスで挙がっている角膜の病気には、ステロイドで治療するものと、ステロイドで悪化するものが両方あります。 見た目では区別がつきません。
Q. 片目だけ涙やけが濃いのですが。
犬種の形が原因なら左右同じように出るはずです。片目だけなら、その目に固有の理由が考えられます。診察で確認できます。
まとめ
- ダックスは、犬種の形では涙やけを説明できません。 出ているなら理由があります
- 獣医眼科の手引きは、ダックスの目の病気を 毛質と体格ごとに書き分けています
- 挙がっているものの多くが 角膜そのものの病気 です。まぶたや涙の出口ではありません
- まぶたの内反も 目尻側(外側) なので、涙点をふさぐのではなく角膜を擦ります
- パンヌスは治りません。 治療は生涯続きます。紫外線で悪化しうるので、散歩の時間帯も意味を持ちます
- ねばつく目やに、目の外側の盛り上がり は、拭く前に受診してください
- ステロイド点眼の使い回しは、この犬種でとくに危険です
ダックスの涙やけは、「犬種だから仕方ない」がいちばん当てはまらない犬種です。 拭いても変わらないなら、それは回数の問題ではなく、まだ見つかっていない原因があるということかもしれません。
参考文献
- ECVO Manual: Breeds 2021 – Dachshund|European College of Veterinary Ophthalmologists(ヨーロッパ獣医眼科専門医協会による犬種別の手引き)
- Pannus in Dogs (Chronic Superficial Keratitis)|VCA Animal Hospitals(米国の大手動物病院チェーン)
- Eye Discharge or Epiphora in Dogs|VCA Animal Hospitals
- Nasolacrimal and Lacrimal Apparatus in Animals|Merck Veterinary Manual(獣医師向けの標準的な手引き)
- Tear Staining in Dogs|MedVet(米国の動物病院グループ)
- FDA warns makers of unapproved tear stain products|AVMA / JAVMA News, 2014
- FDA Warning Letter: Merit Pet Products, LLC(2017年5月12日)
免責事項
本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、診断ではありません。愛犬の症状については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。記載内容は執筆時点で確認できた情報にもとづいており、個々の犬に当てはまるとは限りません。
記事執筆者・監修者
- 西尾 亮佑
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【ペット業界15年以上】横浜ペットコミュニティ専門学院にてトリミング・訓練を学び、大手ペットショップ・ペットメーカーに勤務。数多くのペットショップ・トリミングサロン・動物病院を視察してきました。
その中でペット業界の矛盾の多さや利益優先の姿勢に疑問を持ち、愛犬・愛猫の健康面を最優先に考える想いを貫くため2020年7月15日にDog&Cat CLEARを設立。愛猫21匹と愛犬2匹と暮らしながら『愛犬・愛猫の健康は飼い主が守る』を発信しています。